知っていますか? クリニカルパス

情報の共有から院内のチーム医療、そして地域医療連携へ

連携を推進するクリニカルパスの活用により、良質で安全な医療を確保し、患者さんの満足度を高める
(2010年02月02日)

診療の内容とスケジュールが一覧表に

 病気ごとに、治療や検査、看護ケアなどの内容およびタイムスケジュールを一覧表に表したものを「クリニカルパス」または「クリティカルパス」と呼びます。
 クリニカルパスは、患者さん用と医療スタッフ用があり、ともに医療機関ごとに医師や看護師をはじめ各医療専門分野の医療スタッフが検討して作成しています。わが国でも1995年頃に導入され始め、徐々に普及してきました。

 患者さん用のクリニカルパスは、主に入院中に受ける検査、手術、処置、手術後のリハビリ、食事、入浴などの標準的な内容と予定が、イラストつきでわかりやすく示されており、入院が決まった段階か入院当日に「入院診療計画書」という書類として渡されることが一般的です。
 医療スタッフ用のクリニカルパスは、科学的な根拠に基づいた専門的かつ詳細な内容が書き込まれており、複数の医療スタッフが情報を共有することでスムースな連携を図り、チーム医療の推進に役立てられています。

 クリニカルパスを導入しているかどうかは、医療機関の姿勢を評価できるチェックポイントの一つといえるでしょう。
 さらに最近では、電子カルテに続き、クリニカルパスの電子化を導入する医療機関も出てきており、新しい展開をみせています。

クリニカルパスのねらいは、医療の質と安全性の向上

 クリニカルパスを導入するねらいは、「医療の質と安全性の向上」にあります。具体的には以下のような点が期待されます。

(1)医療の標準化
 従来の医療は担当医師の知識や経験に基づき判断されていましたが、クリニカルパスを使用することで、科学的な根拠に基づいた検査や処置、治療、看護ケアを、一定の質を保ちながら行うことができます。

(2)チーム医療の推進
 クリニカルパスは、医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、臨床検査技師ほか、各医療専門分野のスタッフの意見を元に、科学的根拠に基づいて作成し運用するため、医療スタッフ間での情報の共有化に役立ち、チーム医療を推進することに役立ちます。

(3)インフォームド・コンセントの充実
 クリニカルパスには多くの情報が盛り込まれているので、医療スタッフにとっては患者さんや家族に入院中の検査や治療内容、そのスケジュールなどを説明しやすくなり、患者さんや家族にとっては、これらの情報を把握することができるので、医療スタッフに質問や相談をしやすくなるなど、両者のコミュニケーションを図る上でのツールとして活用できます。
 また、患者さんにとって入院中の予定を知ることで、入院生活の不安が軽減でき、安心して検査や治療を受けることにもつながるため、自己管理や積極的な治療参加ができる、退院後の計画が立てやすいなどの利点があります。

(4)医療の効率化
 クリニカルパスを使用することで、不必要な検査や投薬などを減らすこともでき、入院(在院)日数の短縮も可能で、コスト削減につながります。

(5)医療安全(リスクマネージメント)の推進
 医療スタッフ用のクリニカルパスは、検査・処置・治療のオーダー内容や、看護ケアの内容を複数の医療スタッフが確認するため、指示もれやチェックもれの防止に役立ちます。

 これらの実現で、患者さんは適切な医療を効率的に受けることができます。また、クリニカルパスは、医療スタッフによって定期的に見直されて改善されるので、質の高い安全な医療を確保することもできます。

クリニカルパスの電子化で、活用の幅が広がる

 わが国でもクリニカルパスが普及してきたとはいえ、同一医療機関内でも、診療科ごとに作成され、紙に手書きという方法が長年続きました。
 紙媒体のクリニカルパスでは、記入に時間がかかる、記入もれや誤記入、誤読などが生じる可能性がある、いつでもどこでも閲覧できるわけではないので、複数の医療スタッフが情報を共有するには不便、などの欠点がありました。また、診療科ごとに項目や形式、運用方法が異なっていることが多いため、診療科間の連携が難しいこともありました。
 これらの欠点を解決すべく、最近ではクリニカルパスの電子化を導入する医療機関が出ています。

 東京女子医科大学および東京女子医科大学病院では、院内の標準化されたクリニカルパスの推進に力を入れ、2007年にはクリニカルパスの電子化を導入しました。
 クリニカルパスの電子化により、外来に導入ずみの電子カルテとクリニカルパスの連携が可能となるため、診療情報のトータルな管理ができ、複数の診療科間、外来と入院病棟間、医療スタッフ間で、スムースな情報の共有が実現できるようになりました。
 今後は、統計・分析機能を強化するためのシステムを開発し、検査、処置、治療、看護ケアなどの単なるオーダー表やスジュール表、チェック表として利用するだけではなく、目的や目標を達成して結果を出し、医療の質と安全性をさらに向上させるために、より充実したクリニカルパスの作成を目指しています。

 クリニカルパス運用の充実に向け、同大学および病院では、全国に先駆けてクリニカルパスの専任看護師と診療情報管理士からなるパス専任部署(クリニカルパス推進室)を組織しました。また、院内のさまざまな分野から選ばれたメンバーにより、パス実行委員会を組織し、毎月勉強会や討議の機会を設けています。医育機関として、医学部生への教育にも力を入れています。
 さらにクリニカルパスの推進を院内に留めず、地域医療機関とのスムースな連携を図るために、「地域連携パス」の創出および運用を目指して、ネットワークづくりを始めました。

 現在わが国では、400床以上の医療機関の90%以上でクリニカルパスが導入されていますが、医療機関全体からみると、まだ多くはありません。院内のチーム医療の推進や、地域における医療機関連携の推進に、大きな役割を担うクリニカルパスの作成や運用が、より多くの医療機関で普及し充実していくことが期待されます。

(編集・制作 (株)法研)
【監修】
齋藤 登先生

東京女子医科大学総合診療科准教授
クリニカルパス推進室長
1986年東邦大学医学部卒。90年東京女子医科大学大学院博士課程修了。同年同大学第二外科勤務。2004年同大学講師、05年同大学クリニカルパス推進室長、08年同大学総合診療科准教授就任。第二外科、医療・病院管理学、先端生命医科学研究所、遺伝子医療センターの医師を兼務。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員、日本クリニカルパス学会評議員ほか。

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