動脈硬化の進み具合がわかるLH比-運動と食事でコレステロール対策

チーム医療による生活改善プログラムで動脈硬化を予防・改善

悪玉コレステロール値が低めでも、善玉コレステロール値も低いと心筋梗塞などの危険性が高まります。

「老化による動脈硬化」以上に進行させないように

 「寝たきりや認知症になることなく、健康で自立して暮らすことができる期間」を意味する健康寿命は、平均寿命よりも約6~7年半短くなっているのが現状です。

 この差をもたらしている大きな原因が動脈硬化です。動脈硬化とは、動脈の血管壁が硬く厚くなったり、内側にコレステロールなどがたまって血流が悪くなった状態です。動脈硬化が進んでまったく血管が詰まり血液が届かなくなると、その部分の細胞は死んでしまいます。これが心臓の血管(冠動脈)で起これば心筋梗塞、脳の血管で起これば脳梗塞、足の血管で起これば閉塞性動脈硬化症(ASO)と呼ばれます。

 動脈硬化は老化現象の一つでもあり、20歳前から始まり、50歳以上では85%の人が何らかの動脈硬化を起こしているとみられています。武田病院グループ(京都市)の桝田出医師は、「加齢による自然な動脈硬化にとどまっていれば、心筋梗塞などの危険性も低く抑えることができます。食事、運動、禁煙、休養(睡眠)といった生活習慣の見直しなどで、老化による動脈硬化以上に進行させないことが大切です」と強調しています。

コレステロールを回収するHDL-Cは高めに

 加齢による自然な動脈硬化を加速させる主な危険因子は、高血圧や高血糖、脂質異常です。これらによって動脈硬化が病的レベルに進むと、心筋梗塞などの危険性が高まるわけです。なかでも最大の危険因子は、コレステロールがかかわる脂質異常です。

 健診の検査値で知られるLDLコレステロール(以下、LDL-C)とHDLコレステロール(以下、HDL-C)は、コレステロールの運搬係としてつけられた名前です。LDL-Cは肝臓から体内にコレステロールを運ぶ役割ですが、血液の中で増えすぎると血管壁にたまって動脈硬化を進めるために悪玉コレステロールと呼ばれます。逆にHDL-Cは、体内で余ったコレステロールを引き取って肝臓に運び、動脈硬化を抑えるように働くため、善玉コレステロールと呼ばれます。このため、動脈硬化の予防や改善には、LDL-C値は低く、HDL-C値は高いことが望ましいのです。

 ところが最近、LDL-C値が低めでも、HDL-C値も低いと心筋梗塞などを発症しやすいことがわかってきました。つまり、LDL-Cが低くても、HDL-Cが少ないと余分なコレステロールの回収が滞って動脈硬化を進めてしまう危険性があるのです。
 この危険性も含めて脂質異常をチェックするために、桝田医師は「LDL-CもHDL-Cもそれぞれの検査値に加えて、両者の比率、すなわちLDL-C値をHDL-C値で割った数値=LH比に着目するとよい」としています。動脈硬化自体にはとくに症状はないため、見過ごされやすいのですが、LH比を使えば数値で動脈硬化の進み具合をチェックできるのです。

 桝田医師は、とくに健康上の問題のない人ならLH比2.5以下、心筋梗塞などを起こした人の再発予防にはLH比1.5以下を目指すことをすすめています。心筋梗塞などを起こした人でも、LH比を1.5以下に保ちながら、脂質異常の薬(スタチン系薬剤)による治療を続けると、コレステロールによる血管壁の膨らみ(プラーク)が小さくなる可能性が指摘されているからです。

運動と食事でHDL-Cを上げ、LDL-Cを下げる

 脂質異常を改善して動脈硬化を防ぐには、健診は欠かさずに受けて、食事や運動習慣を整えることが大切です。そのためには、検査や診療、生活指導(食事、運動)などをトータルに受けることができる、いわばチーム医療の体制を整えた医療機関を利用するのが効率的です。
 武田病院グループの東山武田病院では、「生活習慣病予防外来」を開設して、桝田医師や看護師、検査技師、管理栄養士、健康運動指導士らが連携し情報を共有しながら、患者一人ひとりに合った指導を行っています。

 たとえば運動療法では、適度の運動を続けることで、LDL-C値や中性脂肪値は下がってHDL-C値は上昇する、エネルギー消費が増えて減量効果が得られる――といった効果が期待できます。とくに、LH比改善のポイントとなるHDL-C値を高めるためには、毎日30分以上のウオーキングが効果的です。
 また、テレビを見る時間が長い人、デスクワークの時間が長い人ほど肥満の危険性が高い、とのデータがあることから、運動以前の「日常生活の動作として、普段からよく体を動かす習慣」が大切です。

 一方食生活では、コレステロールや脂肪を多く含む食品を減らしてLDL-C値を下げることでLH比を改善することがポイントになります。同外来では、食べる量全体を減らし過ぎると、「つらく」なって長続きしないケースが多いため、コレステロールや脂質を多く含む食品を減らし、栄養のバランスのよい食事をとることに重点を置いています。

 桝田医師は「以上のような生活習慣を守り、定期的に健診を受けてLH比をチェックしながら、動脈硬化を防ぎ健康寿命を伸ばしましょう」と呼びかけています。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
桝田 出先生


武田病院健診センター所長
武田病院グループ 予防医学・EBMセンター長
1980年東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大第3内科、国立循環器病センター、京都大学医学部第2内科などを経て、97年京都専売病院内科部長。2004年同病院副院長。05年東山武田病院副院長。06年同病院生活習慣病センター長(兼任)。09年より現職。京都大学医学部臨床教授を兼任。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会などで役職を務める。

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