血栓性静脈炎とはどんな病気か

 血栓性静脈炎は、静脈のなかに血液のかたまり(血栓)ができ、血管を細くさせたり詰まらせたりすることで静脈とその周囲の皮膚が炎症を起こす病気で、産褥期(さんじょくき)に多いといわれています。元来、日本人は欧米人に比べ発症率は低かったのですが、最近では食生活などの日常生活の欧米化に伴い増加傾向にあります。重症の場合、肺塞栓症(はいそくせんしょう)などの合併症を併発し、死に至ることもありますので、予防が大切です。

原因は何か


(1)血液凝固能の亢進

 妊娠・産褥期にはほとんどの凝固因子が増加し、その活性も亢進しています。
(2)血流の停滞
 妊娠中・産褥早期は増大した子宮が下大静脈を圧迫し、下肢の静脈血流が停滞しやすい傾向にあります。また妊娠後期から産褥早期は安静臥床(あんせいがしょう)の機会が多く、さらに助長される傾向があります。
(3)血管内皮の障害
 産褥期には感染症を発症することが多く、これにより血管内皮が障害され血栓の形成が起こります。
(4)その他
 高齢、肥満、脱水なども原因になります。

症状の現れ方

 皮膚に近い表在性の静脈が原因の場合、皮膚が静脈に沿って赤くはれ、痛みを伴います。時に、血管に沿って索状の血栓を触れます。一方、筋肉のなかを通る深在性の静脈では関連部位であるふとももやふくらはぎに痛みが生じ、皮膚が紫色に変色したり、むくみが生じたりしますが診断は困難です。妊娠・産褥期(出産後約6週間)に発症する静脈炎はその多くが表在性で、そのうち大部分は下腿、大腿に形成されます。

予防


(1)分娩・産科手術後はできるだけ早く離床する。早期に歩行する。早期離床・早期歩行が難しい場合は専門のリハビリテーションを受ける。
(2)下肢の挙上、マッサージを心掛ける。ただし、血栓症をすでに発症した妊産婦・褥婦のマッサージは血栓が飛ぶ可能性があるので危険です。
(3)弾性靴下や弾性ストッキングを装着する。
(4)脱水を避け、十分な水分補給をする。
(5)分娩・産褥期の感染を防止する。
(6)血栓性静脈炎や血栓症の既往、高度な肥満、多胎妊娠妊娠高血圧症候群などの産婦には予防的にヘパリンなどの抗凝固薬を投与する。

治療の方法

 多くの血栓性静脈炎は表在性で、理学的治療と消炎鎮痛薬の投与で管理できるものがほとんどです。しかし肺塞栓症(はいそくせんしょう)などの重篤な続発性疾患を発症する深在性の血栓性静脈炎ではヘパリンなどの抗凝固薬、ウロキナーゼなどの線維素溶解酵素(血栓溶解薬)などを用い、さらに必要ならば外科的血栓除去術を行うこともあります。

血栓性静脈炎に気づいたらどうする

 血栓性静脈炎は近年増加傾向にあります。深部静脈に発症した場合、突然の肺梗塞など、母体の生命に関わる可能性があります。下肢の疼痛(とうつう)、違和感、皮膚変色などがみられた場合、早急にかかりつけ医に相談してください。血管外科医等による専門治療が必要になることがあります。