インフルエンザ脳症・脳炎とはどんな病気か

 日本では1990年代以降、冬期インフルエンザ流行期を中心に年間約100例の小児の急性脳症・脳炎が報告されています。 急速に進行する意識障害、肝機能障害を示すライ症候群、視床(ししょう)病変を中心とした急性壊死性脳症(きゅうせいえしせいのうしょう)などと類縁疾患群を形成しています。
 一方、新型インフルエンザ豚インフルエンザH1N1、2009年)のヒトへの感染と流行の拡大が脅威となっていますが、脳症の報告も増加傾向にあります。季節性インフルエンザ脳症と同様に、意識障害や異常言動が現れます。

原因は何か

 インフルエンザに伴い急性の意識障害などがみられますが、髄液所見でウイルス細胞数が増加していない急性脳症型が多くみられ、髄液での細胞数増加のみられる脳炎型は少数にとどまります。インフルエンザA、B亜型ではA(H3N2)型での頻度が高いとされています。ウイルス学的検索では、髄液からのPCR検索でインフルエンザウイルスは陰性で、末梢血のサイトカイン・インターロイキン(IL)‐6の上昇がみられ、直接のウイルスによる侵襲(しんしゅう)というより高サイトカイン産生とそれによる発症機序が考えられています。

症状の現れ方

 高熱、鼻水、咳、関節痛などのかぜ症状に続き、意識障害、けいれん、異常言動・行動などが高頻度にみられます。

検査と診断

 脳波、MRI検査、生化学検査(AST・ALT上昇、CK上昇、低血糖・高血糖、高アンモニア血症など)、インフルエンザウイルスに対する迅速診断キットによる抗原検査、抗体・PCR検査を行います。
 大きな声で呼びかけると眼をあける程度の意識障害、頭部CT検査でのび漫性低吸収域、視床など局所性病変、脳幹浮腫(のうかんふしゅ)などがあると診断が確定します。

治療の方法

 支持療法として意識レベルの評価、体温、呼吸数、血圧等のモニタリング、気道の確保、けいれんへの対策が大切です。
 特異的治療としては、抗ウイルス薬(オセルタミビル〈タミフル〉、ザナミビル〈リレンザ〉)、メチルプレドニゾロン・パルス療法、ガンマグロブリン大量療法・低体温療法などがあげられます。アセチルサリチル酸(アスピリン)、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸は予後のリスク因子にあげられ、用いてはならないとされています。

インフルエンザ脳症・脳炎に気づいたらどうする

 インフルエンザに続いて意識障害、けいれん、異常言動・行動がみられた場合、この病気が疑われます。緊急に二次または三次医療機関への受診をすすめます。

●タミフル脳症(のうしょう)
 2007年2月、オセルタミビル(タミフル)服用後の異常行動が発現し、転落等の事故に至った10歳以上の未成年者の報告が続きました。インフルエンザ脳症との関連、この薬剤の中枢への影響など不明な点が残されていますが、未成年者への投与に際しては注意が喚起され、保護者には小児・未成年者が一人にならないよう配慮を求めるとの警告が出されています。