どんな損傷か



 肩の深部にある肩腱板という腱性組織の損傷です(図62)。腱板は棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)の4つからなりますが、最も傷みやすいのが棘上筋腱です。肩腱板損傷は、40歳以上の男性の右肩に好発します(全体では男6割、女4割)。発症年齢のピークは60代です。

原因は何か

 損傷の原因としては、明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因はなく、日常生活動作のなかで断裂が起きます。肩腱板は骨と骨(肩峰(けんぽう)と上腕骨頭(じょうわんこつとう))にはさまれているので損傷されやすく、また老化によっても変性します。男性の右肩に多いことから、肩の使いすぎが原因となっていることも推測されます。損傷型には、完全断裂と不全断裂があります。

症状の現れ方

 肩の運動障害・運動痛・夜間痛があります。とくに夜間痛で、「睡眠がうまくとれない」という訴えが多く聞かれます。運動痛はありますが、多くの患者さんは腕(上肢(じょうし))の挙上(きょじょう)は可能です。肩関節周囲炎と異なるのは、拘縮、すなわち関節の動きが悪くなることが少ないことです。他には、挙上するときに力が入らない、あるいは挙上するときに肩の前上面でジョリジョリという軋轢(あつれき)音がする場合もあります。

検査と診断

 X線撮影、関節造影検査、MRI、超音波検査などで肩関節周囲炎五十肩)などと区別(鑑別診断)します。X線所見では、肩峰と骨頭の間が狭くなります。MRI、超音波検査などでは骨頭の上方の腱板部に断裂の所見がみられ、断裂の大きさや腱板の厚さが評価できます。

治療の方法

 転倒などの急性外傷で損傷した場合には、三角巾で1〜2週間安静にします。
 完全断裂部が自然治癒することはありませんが、痛みなどの症状は注射療法と運動療法などの保存療法で多くの場合軽快します。夜間痛が強い例では水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔薬を肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)内に注射しますが、夜間痛がなくなればヒアルロン酸の注射が行われます。腱板のすべてが断裂することは少ないので、運動療法では残っている腱板の機能を賦活(ふかつ)させる訓練が行われます。
 保存療法で肩関節痛と運動障害が治らないときは、手術が行われます。手術では損傷した肩腱板の縫合が、直視下あるいは関節鏡視下に行われます。

肩腱板損傷に気づいたらどうする

 肩関節周囲炎五十肩)では自然に治ることもありますが、夜間痛が続くようであれば、腱板損傷の可能性もあるので、整形外科への受診をすすめます。