無脾症(無脾症候群)とはどんな病気か

 本来、各内臓は左右別々に形作られていますが、先天的に左右同じように形成される場合があります。たとえば心臓であれば、2つの心房がともに右心房の形態で、心室も右心室の形のみで左心室が痕跡的という、心臓の右側の成分だけで形作られたかのような状態になります。逆に、左側の成分だけで形作られたかのような状態になることもあります。この対称性は、全身の臓器に共通する傾向にあります。
 脾臓(ひぞう)は胃の左側にある握りこぶし大の臓器で、主に古くなった赤血球を取り除いたり、免疫のはたらきに関係したりしています。全身の臓器が主に右側の成分だけで形作られた場合は脾臓がないことが多く、無脾症(むひしょう)といわれます。逆に左側成分が主体の場合は、複数の脾臓が認められることが多く、多脾症(たひしょう)といわれます。
 あくまでも脾臓の有無が問題の本質ではないため、最近は心房内臓錯位(さくい)、心房相同などと呼ぶのが一般的です。

原因は何か

 確定された原因は不明ですが、いくつかの遺伝子異常の関係が指摘されています。

症状の現れ方

 無脾症の場合、心臓に関しては肺動脈や肺静脈の異常を伴うことが多く、出生直後からのチアノーゼ(皮膚や粘膜が紫色になること)で気づくことがあります。一方、多脾症の場合は不整脈が問題になることがあります。
 腹部の症状としては、腸の位置がおかしいために腸閉塞(ちょうへいそく)の症状(突然の嘔吐、腹痛など)が出たり、胆道系の病気になったりすることがあります。また脾臓がない場合、免疫系の異常から重症の感染を繰り返すことがあります。

検査と診断

 特徴的な心奇形の組み合わせで疑われます。全身の臓器に対しては腹部エコーやCT、MRIが有用です。

治療の方法

 肺血流の減少、増加による症状があれば内科的にコントロールします。外科的には、心臓の形態に合わせた手術が必要になります。
 無脾症の場合、乳児期の早期に肺静脈の異常や弁逆流に対する手術が必要になる場合が多くありますが、これらは非常に難しい手術であることが多く、残念ながら外科的治療が不可能と判断せざるをえない症例もあります。


 最終的には、フォンタン型手術(図13)を目指す人が多くなります。また、不整脈に対する治療が必要になる人もいます。

無脾症(無脾症候群)に気づいたらどうする

 合併する心奇形が最も大きな問題であるため、まず循環器専門医の診断を受ける必要があります。そのうえで感染症に対する対策や、腹部臓器の異常による症状に注意する必要があります。