重症筋無力症とはどんな病気か

 運動を起こす命令は、電気刺激として神経を伝わっていき筋肉を収縮させます。神経と筋肉の間には神経筋接合部というすきまがあり、ここではアセチルコリンという物質が刺激の最終的な伝達を担っています。重症筋無力症は、この伝達が十分になされないために、筋肉の収縮が弱く、次第に神経の命令どおりに筋肉が動かなくなり、疲労してしまう病気です。

原因は何か

 筋肉の表面には、神経の命令を伝えるアセチルコリンを受け取るアセチルコリン受容体といわれる場所があります。この場所が自己抗体でふさがれるために伝達障害が起こることが原因です。自己抗体は、体のなかに備わる免疫機構の障害で生じるのですが、その原因はまだ不明です。
 免疫の中継基地である胸腺(きょうせん)の異常を伴う例も多くみられます。特殊なタイプとして、母親が重症筋無力症の場合、生まれた赤ちゃんに一時的に症状のみられる新生児一過性筋無力症があります。また、アセチルコリン受容体が生まれつき障害を受けている先天性筋無力症もあります。

症状の現れ方

 10歳以下と30〜50代に発症のピークがあります。小児期発症例は眼の筋肉に症状が出てくる眼筋型(がんきんがた)が多く、まぶたが自然に下がってくる眼瞼下垂(がんけんかすい)や斜視(しゃし)などを伴う眼球の運動障害がみられます。“テレビを見る時にあごを上げて頭を後ろにそらしている”とか“物を見る時に首を傾けている”などの症状で気づかれます。朝方はよいのですが、夕方になるとひどくなるといった日内変動がみられるのが特徴です。
 小児例の10%には全身の脱力、声が出にくい、飲み込みにくい、息がしづらいといった全身の筋肉に症状を起こす全身型がみられます。このタイプでは、呼吸筋の麻痺で時には生命を脅かす状態をも引き起こすことがあります。重症筋無力症の症状を悪くする誘引として、予防接種、ストレス、さまざまな感染症などがあります。また、症状を悪化させる抗生剤などの薬もあるので注意が必要です。

検査と診断

 抗アセチルコリンエステラーゼ薬を注射し、筋無力症の症状が軽くなるかどうかで診断します。注射によってアセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを少なくし、アセチルコリンの伝達力を高めることを利用するテンシロンテストという検査です。
 そのほか、神経に電気刺激を加えた場合の筋肉に起きる活動電位の変化をみる筋電図でも診断することができます。重症筋無力症の場合、活動電位の振幅が次第に減少していく様子がみられます。血液検査でアセチルコリン受容体に対する自己抗体の抗体価を直接測定することでも診断できますが、すべての例で高値を示すとはかぎりません。

治療の方法

 小児に多い眼筋型では、まず抗コリンエステラーゼ薬の内服治療が行われます。神経筋接合部におけるアセチルコリンの濃度を高めて作用時間を長くし、筋肉にあるアセチルコリン受容体への反応を高めて症状の軽減を図ります。これで効果のない場合や全身型では、自己免疫過程を抑える目的で、副腎皮質ステロイド薬が使われます。急性期は点滴や経口で大量に使い、症状が安定すれば減量して2〜3年間使います。
 症状が激しい場合には抗体を取り除くために血漿(けっしょう)交換をする場合もあります。小児例では少ないですが、全身型では胸腺を摘出することもあります。

重症筋無力症に気づいたらどうする

 日内変動を伴う筋力低下に気づいたら病院を受診してください。予防接種、抗生剤などの薬剤の使用、過度な運動や過労、むし歯副鼻腔炎(ふくびくうえん)などの慢性の感染症が発病の引き金になることもあります。