赤血球に含まれるヘモグロビンは、α(アルファ)鎖グロビンとβ(ベータ)鎖グロビンの各2本がヘム(鉄を含んだ色素)と結合した構造をしています。ヘモグロビン異常症は、グロビン鎖の構造異常によるもの(異常ヘモグロビン症)とα鎖β鎖のいずれかの合成障害によるもの(サラセミア)とに大別されます。ここでは日本人で問題になる異常ヘモグロビン症のひとつである不安定ヘモグロビン症(ハインツ小体貧血)を取りあげます。

ヘモグロビン異常症とはどんな病気か

 不安定ヘモグロビン症では、グロビン鎖の異常により構造が不安定なヘモグロビンが形成されます。この不安定ヘモグロビンは赤血球内で自動的に酸化されやすくなる傾向(自酸化傾向)が強く、ヘムを脱落・崩壊して尿中へと排出されます。一部は赤血球内で変性・沈殿してハインツ小体を形成し、活性酸素を生じて赤血球膜に障害を与え、溶血(ようけつ)(赤血球の破壊)を起こします。

症状の現れ方

 多くの場合では小児期に脾腫(ひしゅ)を伴う慢性的な溶血性貧血として発症します。溶血は赤血球の酸化を促す薬剤や感染症によって悪化します。とくにパルボウイルスB19の初感染(伝染性紅斑リンゴ病)に際し、本症のような溶血性貧血の患児では一過性無形成発作と呼ばれる急激な貧血・黄疸(おうだん)の進行が認められることがあり、注意が必要です。

検査と診断

 貧血、網(もう)赤血球の増加、間接ビリルビンの上昇、血清ハプトグロビンの低下などの溶血性貧血の所見が認められます。等電点電気泳動や逆相HPLC法で異常なヘモグロビンであることを証明します。イソプロパノール沈殿生成試験などで、不安定ヘモグロビンかどうかが判定できます。

治療の方法

 溶血発作は感染症とそれに伴う発熱、薬剤が原因となるので、軽い感染症でも注意深く観察することが必要で、非酸化的薬剤で早期に解熱を図ります。輸血をしばしば必要とする場合は、鉄過剰症(てつかじょうしょう)への注意が必要です。