成長ホルモン分泌不全性低身長症(下垂体性小人症)とはどんな病気か

 脳のなかにある下垂体という器官から分泌される成長ホルモンの量が少ないために、成長率が悪くなり低身長になる病気です。低身長は、身長SDスコアがマイナス2SD以下という統計の基準で定義され、同性・同年齢の100人に2〜3人が低身長という定義にあてはまりますが、この低身長のなかで成長ホルモン分泌不全性低身長症はせいぜい5%以下です。

原因は何か

 約95%は原因が明らかでなく、特発性と呼ばれます。約5%は、脳腫瘍頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)が多い)などの器質的な原因で起こります。非常にまれに、成長ホルモンや成長ホルモン放出因子の遺伝子の異常や、下垂体の発生に関係する遺伝子(転写因子)の異常による遺伝性のものがあります。

症状の現れ方

 通常は成長率の低下と低身長だけです。先天的に重症の成長ホルモン分泌不全がある場合には、新生児期に低血糖が認められることがあります。また、まれに下垂体から分泌されている他のホルモンの分泌不全を伴うことがあり、甲状腺機能低下症性腺機能低下症、副腎機能低下症、尿崩症(にょうほうしょう)などを伴うことがあります。

検査と診断

 間脳下垂体障害調査研究班の診断の手引きに従います。
 一般的には、成長障害(身長SDスコアがマイナス2SD以下、または2年間の成長速度SDスコアがマイナス1・5SD以下)があり、成長ホルモン分泌刺激試験(インスリン、アルギニン、グルカゴン、クロニジン、Lドーパ、GHRP‐2)のうちの2つ以上の試験で成長ホルモンの最大値が6ngml以下の場合(GHRP‐2負荷では、16ngml以下)、成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断します。
 ただし、新生児期に成長ホルモン分泌不全と思われる低血糖がある場合、他の下垂体ホルモン分泌不全がある場合、脳腫瘍などが認められる場合には、ひとつの刺激試験で6ngml以下(GHRP‐2負荷では16ngml以下)であれば本症と診断します。すべての分泌刺激試験で、成長ホルモン最大値が3ngml以下(GHRP‐2負荷では10ngml以下)の場合を重症、最大成長ホルモン頂値が3〜6ngmlの場合を中等症、6ngmlを超える場合を軽症と分類します。
 他の検査所見としては、IGF‐I(インスリン様成長因子‐I)やIGFBP‐3(IGF結合蛋白3)の低値、骨年齢が暦年齢に比べて80%以上の遅れ、尿中成長ホルモンの低値、睡眠時または24時間の成長ホルモンの分泌低下などが認められます。

治療の方法

 成長ホルモンを投与することで、成長率の改善を図ります。成長ホルモンは注射しかないため、遺伝子組替え成長ホルモンを体重1kgあたり0・175mgを1週間の量とし、週6〜7回に分けて投与します。成長ホルモン治療は自己注射が認められているので、小さい時は両親が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、基本的に毎日寝る前に皮下注射します。
 1年目は平均8cmぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。そのため、1〜2年目は他の子どもの背に近づきますが、そのあとは徐々に近づくというくらいの効果です。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の成人身長の平均は、現在の多数例のデータでは、男性で160cm、女性で148cm前後です。

成長ホルモン分泌不全性低身長症(下垂体性小人症)に気づいたらどうする

 現在、低身長でなくても、成長率の低下がみられる時、学校での背の順が前になってくるような時は、必ず小児内分泌専門医に診てもらってください。成長ホルモン分泌不全性低身長症以外のホルモンの病気が隠れている時があります。成長ホルモンを投与する場合も、成人身長に対する治療効果は、専門医と一般医では差が認められるので、低身長が認められたら、小児内分泌専門医に相談することをすすめます。