肺がん<お年寄りの病気>の症状の現れ方

 肺がんは、症状が出る前に健康診断などで発見されることもありますが、多くは4週間以上続く咳(せき)、喀痰(かくたん)、血痰(けったん)、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器の症状をきっかけに発見されます。まれに、胸膜への転移(胸水貯留)や脳転移の症状(頭痛、吐き気、嘔吐)、骨転移(腰痛や胸痛)などで見つかることもあります。
 気管・気管支に発生するタイプの肺がんは、血痰や咳、呼吸困難などの症状が出やすく、早期に発見されることも多いのですが、肺の末梢に発生するタイプの肺がんは、がんが大きくなるまで無症状のことが多く、要注意です。

肺がん<お年寄りの病気>の診断と治療の方法

 肺がんの治療は、小細胞がんか非小細胞がんかによって大きく異なります(表5)。

小細胞がん
 早期から全身に転移しやすく、進行が早い反面、化学療法(抗がん薬)や放射線治療がよく効くので、抗がん薬の全身投与が第一選択になります。高齢者で、病気の発症に伴って日常生活動作(ADL)が低下した患者さんでも、確実に治療効果が望めます。
 治療成績は、診断時に胸腔内にがんがとどまっていた場合(限局型:LD)で20〜30%(5年生存率)、胸郭外に転移があった場合(広範型:ED)で10〜20%(2年生存率)です。
 必要によって、転移がない時期に脳に放射線の予防的照射を実施する場合もあります。

非小細胞がん
 病巣が肺の片側に限局している場合、まず手術による病巣の切除およびリンパ節の郭清(かくせい)が第一選択です。しかし、病巣と反対側のリンパ節にも転移が認められた場合は、抗がん薬の併用も必要です。
 診断時から転移が認められた場合、もしくは手術不能な場合は、抗がん薬と放射線治療が主体になります。しかし、ADLが低下した人は、治療に伴う身体的負担がむしろ有害になる可能性があるため、積極的な治療を行わないほうがよい場合もあります。
 化学療法、放射線治療いずれの場合でも、肺がんは完治が非常に困難ながんです。患者さんや家族はよく担当医と相談して治療方針を決めることが必要です(インフォームド・コンセント)。判断に悩む場合は、ほかの医療機関の専門医に相談することも必要です(セカンドオピニオン)。その場合は、必ず紹介状と資料を担当医に依頼したほうが円滑にいきます。
 近年、遺伝子工学の発展に伴い、がん細胞の増殖、転移を標的とした薬剤(上皮成長因子受容体阻害薬:イレッサ)が使用可能になっています。イレッサの特徴は、腺がん、女性、非喫煙者といった特定の患者さんで有効性が高く、またこれらはEGFR(上皮成長因子受容体)の遺伝子変異と密接に関連しています。EGFRの遺伝子変異は投与前にがん細胞より検査可能で、陽性であれば、70〜80%でイレッサの奏効(生存期間の延長)が期待できます。イレッサに関する重い副作用として、間質性肺炎の発症が報告されています。