虚血性心疾患<お年寄りの病気>の診断と治療の方法


狭心症の場合
 症状、心電図、運動負荷試験などで狭心症の診断(あるいは疑い)がついたら、次に冠動脈造影(かんどうみゃくぞうえい)検査(心臓カテーテル検査)を行うことを検討します。冠動脈のどこに、何カ所、どんな狭窄(きょうさく)病変があるのかを知るために行う検査です。患者さんの全身状態、理解力、腎機能、あるいは希望(人生観)を加味して検査を行うか否かを決めますが、条件が満たされれば85歳を超える人でも安全に検査することが可能です。
 最近の狭心症の検査では心臓カテーテル検査による冠動脈造影のほかに、マルチスライスCTスキャンを用いた冠動脈CTアンギオグラフィ(CTA)も行われるようになってきました。腕の静脈に造影剤を注入することで冠動脈を映し出すことができるので、カテーテルを体内深くまで入れる必要がなく、外来で検査できます。冠動脈狭窄の判定能力は心臓カテーテル検査による冠動脈造影に及びませんが、スクリーニング検査として用いられるようになってきました。
 狭心症の治療は、内科的薬物治療、外科的冠動脈バイパス手術、そしてカテーテルによる冠動脈インターベンション治療(風船による冠動脈拡張術、ステント留置術など)の3種類の治療法から、ひとつあるいは複数を組み合わせて行います。主治医とよく相談し、病状と患者さんの希望に合った治療法を選択します。なお、後二者の治療を行うためには、前述した冠動脈造影検査が必須になります。
 日常生活では、冠動脈の動脈硬化の進行を防ぐために糖尿病高血圧脂質異常症をきちんと管理し、禁煙することが極めて重要になります。医師に指示されたカロリーや塩分の摂取量を守り、ダイエットにより肥満を解消することも大切です。
 それまで安定していた狭心症の症状が急に出やすくなったり、症状が強くなった際には、急性心筋梗塞の前触れ(不安定狭心症)であることがあるので、すみやかに主治医に相談してください。

急性心筋梗塞の場合
 突然、強い胸部痛を訴えて発症する急性心筋梗塞は、発症直後の6時間あまりが治療上の“ゴールデンアワー”と呼ばれています。この間に、冠動脈の血流を再開させる再潅流(さいかんりゅう)療法を行うと一部の心筋を梗塞壊死(こうそくえし)から救い、患者さんの心機能を保持し、生命の危険(死亡率)を改善しうるのです。このため、15分を超えて続く胸痛発作がある時には、ただちに救急医療機関を受診することが大切です。
 急性心筋梗塞では、年齢、合併症(腎機能の低下、認知症、出血性疾患など)、心筋梗塞の規模と循環動態、発症からの時間経過などを総合的に判断し、保存的治療、冠動脈血栓溶解(かんどうみゃくけっせんようかい)療法、緊急冠動脈インターベンション治療のなかから治療法を選択します。
 保存的治療は、安静、鎮静、酸素吸入、硝酸薬(しょうさんやく)の投与などの一般的治療を行ったうえでCCU(心臓集中治療ユニット)において行われます。不整脈の監視と治療、ポンプ失調に対する薬物および機械的補助療法、機械的合併症(心破裂、心室瘤(しんしつりゅう)形成など)の予防と治療が中心になります。
 発症から6時間以内で禁忌がなければ、各施設の状況により冠動脈血栓溶解療法あるいは緊急冠動脈インターベンション治療を行います。