肝硬変とは

 肝硬変は、長年にわたる肝機能の悪化の末、肝臓の終末像としてみられる病態です。具体的には、肝臓全体が線維化により萎縮し、小さくなり、岩のように硬くなることからこの名前がつけられました。その原因は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによるウイルス性のものと、アルコール(飲酒)によるものがほとんどです。


 肝硬変になると進行の程度によってさまざまな症状が現れ、最終的には肝臓が機能しなくなる肝不全に陥り、生命が脅かされます。たとえば、眼や皮膚が黄色くなる(黄疸(おうだん))、おなかが張って体重が増える(腹水)、足や体がむくむ(浮腫)、などです(図12)。また、破裂すると吐血や下血を引き起こす食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)、アンモニアが高値となり手が震え(羽ばたき振戦(しんせん))、ひどくなると意識障害を来す肝性脳症(かんせいのうしょう)も注意が必要です。

高齢者での特殊事情

 肝臓は昔から「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気が進行しても自覚症状として現れません。とくに、高齢者ではこの傾向は強くみられます。したがって、定期健診などの血液検査で肝機能(AST、ALTなど)を日ごろからチェックしておく必要があります。
 また、高齢者に特有の肝硬変の症状というのはありませんが、自分自身では黄疸や皮膚症状、腹部症状などの肝硬変のサインを見逃しやすくなります。肝硬変やその前段階の慢性肝炎と診断されれば、自覚症状がなくても、定期的に病院で検査や治療を受けることをすすめます。

治療とケアのポイント

 肝硬変になってしまった肝臓は、今の医学では正常な肝臓へはもどりません。そこで、今以上に肝硬変を悪化させないことが最も重要です。
 ウイルス性肝硬変に対しては、厚生労働省の研究班による包括的治療のガイドラインが作成されています。それによると、まず、原因ウイルスの駆除および減少により、肝機能の改善を目指します。
 C型ではインターフェロン、B型ではエンテカビルなどの抗ウイルス薬を使用します。それでもAST、ALTが高い人には、ウルソの内服や強力ネオミノファーゲンCの注射が行われます。血清アルブミン値が低い場合には、分岐鎖アミノ酸製剤(リーバクト)を内服します。
 腹水には、まず安静および水分塩分制限を行います。そして、利尿剤を内服して、おなかの水を減らします。静脈瘤には内視鏡を使い、静脈瘤硬化療法や静脈瘤結紮(けっさつ)術などを行います。肝性脳症では、浣腸やラクツロース(モニラック)の投与を行い、経口不可能な場合にはアミノレバンの点滴が有効です。
 2004年以降、肝硬変に対する生体肝移植が保険適用になっていますが、高齢者では副作用などのリスクが高く、慎重に検討する必要があります。
 家庭では、十分な睡眠と規則正しい生活を心がけましょう。食事はバランスのとれたものをとり、アルコール類は禁止です。たとえば、肉や乳製品などの脂肪の多い食事は避けて、魚や野菜、豆類など良質な蛋白質をとりましょう。また、1日の食事は分割し、食後しばらくは安静にすることも重要です。

その他の重要事項

 肝硬変により亡くなる人は、治療法の進歩により年々減少しています。しかし近年、肝硬変に合併する肝臓がんでの死亡が増加しています。定期的な検査により、症状のない早期に発見し、治療することが重要です。