高齢者での特殊事情

 皮膚掻痒症とは、一見正常に見える皮膚にかゆみを感じる状態です。何も発疹のない皮膚にも強いかゆみがあるのが皮膚掻痒症の特徴ですが、実際には、かき壊しによる掻破痕(そうはこん)(線状の細かいかさぶたなど)を伴うことが多くあります。
 皮膚掻痒症はかゆみの分布から、全身の皮膚の広い範囲にかゆみのある汎発性(はんぱつせい)皮膚掻痒症と、陰部などの特定の局所にかゆみを感じる限局性皮膚掻痒症の2種類に分けられます。いずれの場合も高齢者での発症が多くみられます。
 高齢者の汎発性皮膚掻痒症は、高齢者特有の乾燥肌、いわゆる老人性乾皮症(かんぴしょう)に起因するものが最も多く、老人性皮膚掻痒症と呼びます。また、各種老年病や基礎疾患、あるいは薬剤などが関係した汎発性皮膚掻痒症もまれではありません。
 限局性皮膚掻痒症は、多くは便や尿もれの刺激、神経過敏、陰部皮膚粘膜の加齢変化などが原因になります。


 いずれの掻痒症も診断に際しては、ほかの皮膚にかゆみを生じる疾患(掻痒性皮膚疾患)との区別が重要になります(表17)。

治療とケアのポイント

 老人性皮膚掻痒症では、乾皮症を改善するための外用療法、かゆみを抑えるための対症療法、乾皮症とかゆみを助長したり、悪化させる生活習慣の是正が必要です。
 老人性乾皮症は四肢伸側、側腹部、腰部に多発する高齢者特有の乾燥肌で、光沢がなく乾燥してひび割れ、表面に細かい鱗屑(りんせつ)(白色の薄い膜)ができます。必ずかゆみを伴うわけではありませんが、皮膚のバリア膜機能の低下により外界からの刺激が皮膚内部に伝わりやすいため、衣類のこすれなどで簡単にかゆみが誘発されます。乾皮症に対しては、保湿外用薬(尿素やヘパリン類似物質の軟膏)の塗布が効果的です。
 かゆみを抑えるための対症療法では、抗ヒスタミン成分配合薬の外用、あるいは抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬(ヒスタミン以外のかゆみ誘導因子の遊離抑制効果もある)の内服治療を行います。かき壊しによる炎症や湿疹化を防ぐため、ステロイド外用薬を併用する場合もあります。
 日常生活では、入浴時にこすることの禁止(石鹸の使用は可)、入浴直後の保湿外用薬を用いたスキンケアの励行、ゆったりとした肌着の着用、冬期の過度の暖房と低湿度の回避、電気毛布の使用禁止、アルコールや香辛料など体が熱くなる食物をひかえるなどを心がけます。
 そのほかの汎発性皮膚掻痒症では、がんこなかゆみをもたらす原因や基礎疾患の発見と、治療に努めることが最も大切です。治療は老人性皮膚掻痒症と同様です。
 限局性皮膚掻痒症では、かゆみの原因となる便・尿の刺激、痔、前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)、陰部感染症(カンジダなど)、下着のこすれなどの有無を確認し、その改善に努めます。また、かゆみへの対症療法として、抗ヒスタミン成分配合薬、亜鉛華(あえんか)軟膏、アズレン軟膏、グリテール配合ステロイド軟膏などの外用を継続的に行う必要があります。