妊娠すると、エストロゲン、プロゲステロン、副腎皮質ホルモン、プロラクチンなどのホルモンのはたらきにより、乳腺が発育します。とくに、プロラクチンは乳腺から乳汁を生成、分泌させる大切なホルモンで、妊娠中に増えますが、実際は分娩まで本格的な乳汁の分泌は生じません。その理由として、胎盤(たいばん)から大量に分泌するエストロゲンとプロゲステロンが、乳腺のプロラクチンに対する感受性を低下させることがあげられています。
 分娩で胎盤が出されると、血中のエストロゲンとプロゲステロンは一気に低下し、乳汁の分泌が開始されます。分娩直後は、乳汁の分泌は一般に不十分ですが、2日目ころから初乳(しょにゅう)として分泌が始まります。初乳は濁った黄色の液体で、免疫グロブリンを多く含んでいます。
 産褥5日目ころからは移行乳(いこうにゅう)になり、7日目ころには成乳(せいにゅう)になります。成乳は初乳に比べて免疫グロブリンの含有量は少ないのですが、乳糖を多く含んでいます。
 母乳中に分泌される免疫グロブリンは、新生児の腸管で腸粘膜を保護し、免疫機能の未熟な新生児を感染から守ります。乳腺から乳管内に分泌された乳汁が乳頭から出されるためには、脳下垂体後葉(のうかすいたいこうよう)ホルモンのオキシトシンが必要ですが、子どもが乳頭を吸引する刺激は、神経を伝って下垂体に達し、オキシトシンの分泌を促して乳汁を出させます。
 また、授乳をして乳腺腔を空にするという機械的刺激も、乳汁の分泌を維持するためには大切です。