先天性風疹症候群(CRS)

 妊婦が妊娠前半期に風疹に感染すると、器官形成期にある胎児に、(1)白内障(はくないしょう)あるいは緑内障(りょくないしょう)、(2)心奇形(動脈管開存肺動脈狭窄(きょうさく)心室中隔(しんしつちゅうかく)欠損心房(しんぼう)中隔欠損など)、(3)感音性難聴(かんおんせいなんちょう)を3主徴とする先天性風疹症候群(CRS)が発生することがあります。
 妊娠10週までの胎内感染率は90%で、その後漸減して妊娠18週では約40%となりますが、そのうち先天異常発生率は、10週までが100%で、その後急減し18週以降は0%でした(ミラーら、1982)。すなわち、感染時期により胎児への影響が違います。最近、再感染によるCRSが、まれですが生じることが報告されています。
 CRSの大半は致命的ではなく、早期発見と手術、リハビリテーションで日常生活が可能となります。妊娠前に風疹HI抗体を測定し、免疫がなければワクチンを接種して予防することが必要ですが、妊娠中に初めてHI抗体が陰性と判明した場合は分娩後にワクチン接種を受けます。すでに生まれている子どもがいれば、抗体を測定し、陰性であればワクチン接種を受けさせます。

検査と診断

 風疹HI抗体の測定により未感染か既感染かを推定し、風疹特異IgM抗体の測定により過去の感染か最近の感染かを推定します。風疹特異IgG抗体、HI抗体、IgM抗体の推移も、感染時期の推定に役立ちます。
 また妊婦自身も、(1)風疹既往歴、(2)通知表の「風疹のため出席停止」の記録、(3)母子手帳の記録、(4)流行年(1976年、82年、87年、92年に日本で大流行)、(5)ワクチン接種歴(1986年生まれの女性では風疹抗体保有率が約55%と他の年齢層に比して極端に低く、さらに昭和54年4月2日〜昭和62年10月1日生まれの世代ではワクチン接種率が約60%と低い)、(6)周囲での流行の有無(流行時期は毎年だいたい1〜8月)、(7)発熱、発疹、頸部(けいぶ)リンパ節腫脹(しゅちょう)の有無を確認し、医師に伝えます。
 これにより大多数が妊娠前の感染と診断され、羊水の遺伝子診断までを必要とする症例を少なくすることができます。
 最近、風疹特異IgG抗体のアビディティ(抗原結合力)が初感染初期には低く次第に上昇することから感染時期を推定でき、これが高値であれば200日以上前の感染と診断できるようになりました。再感染では高値であることを利用し、再感染の診断に用いられています。

再感染によるCRSの発生率

 日本で出生したCRS例中、母体の再感染による割合は約5%という報告があります。日本でのCRSの報告は、1999年が0例、2000〜03年が毎年1例と少なかったのですが、04年は6月現在で5例と増加しています。04年のうちの1例の母親は風疹ワクチンの既往があり、再感染による胎内感染が疑われています。

今後の展望

 現行の弱毒生ワクチンによる免疫力とその持続性は、自然感染によるものと比べて弱く、ワクチン接種後の再感染による胎内感染例が報告されています。さらに、低年齢層ほどワクチン陽転率が低いことが知られており、男女年少児の1回接種だけでは、出産年齢女性の抗体価がさらに低下し再感染例が増加することが懸念されます。今後はワクチンの2回接種の検討が望まれます。