分娩後異常出血とはどんな病気か

 周産期管理の発達により母体の死亡率は低下したものの、分娩時と分娩後の出血は産後の肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)とならび死亡原因の上位を占めており、母体死亡の30%にのぼるとされています。ほとんどは予見が困難で、発症すると母体の状態が急激に悪化する可能性があります。

原因は何か

 分娩後の異常出血の原因になりうる疾患および病態はさまざまで、また、原因が単独の場合と、重複して存在する場合とがあります。内科的な疾患、とくに血液疾患の合併が原因の異常出血にはより注意が必要です。分娩後の異常出血の主な原因を、次の2分類により示します。
(1)分娩後出血発症までの時間による分類
a.早期分娩後出血(分娩後24時間以内)
 弛緩(しかん)出血胎盤遺残(たいばんいざん)、産道損傷、子宮破裂、子宮内反、癒着(ゆちゃく)胎盤、先天性凝固障害
b.晩期分娩後出血(分娩後24時間〜6週まで)
 感染、胎盤ポリープ、先天性凝固障害
(2)要因部位による分類
a.子宮外の要因による出血
 血液学的疾患、出血性素因、軟産道(なんさんどう)の血腫(けっしゅ)、軟産道裂傷
b.子宮内の要因による出血
 弛緩出血胎盤遺残、卵膜遺残、子宮内反、子宮破裂、羊水塞栓、産科DIC(播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群

症状の現れ方

 出血の原因によって症状の現れ方が異なるため、以下に分娩後異常出血を来す代表的な疾患について、それぞれ述べます。
(1)弛緩出血
 胎盤が剥離(はくり)した面から出血した血が子宮内にたまり、子宮収縮と同時に大量に排出されることによる、間欠的な大量出血が典型的です。子宮は軟らかく、子宮底の上昇が認められます。子宮はすぐに収縮不全の状態になるため新たな出血が再び子宮内にたまり、この出血が繰り返されると凝固因子の消費による播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こし、止血ができなくなります。
(2)産道裂傷
 胎児娩出直後から起こる持続的、鮮紅色の出血が特徴です。
(3)腟壁(ちつへき)、会陰血腫(えいんけっしゅ)
 分娩後の産道痛と、あまり出血していないにもかかわらず、血圧低下や頻脈などの貧血症状がみられる場合に本疾患が疑われます。症状は分娩後しばらくしてから現れます。産道痛は血腫が増大するとともに強まり、鎮痛薬を使ってもあまり軽快しません。痛みの程度は明らかに正常分娩後と異なり、血腫形成部の疼痛と腫脹もあります。周囲組織の圧迫による肛門部の痛みがあることもあります。
(4)子宮内反(しきゅうないはん)
 胎盤娩出時に生じる急激な疼痛と持続性の出血がみられます。疼痛は非常に強く、疼痛性のショックを示すこともあります。一見、筋腫(きんしゅ)分娩のような赤色腫瘤(しゅりゅう)が腟内あるいは腟外に認められ、恥骨(ちこつ)上に子宮体部を触れなくなります。
(5)子宮破裂
 帝王切開術や子宮筋腫核出術(かくしゅつじゅつ)の既往症がある妊婦が経腟(けいちつ)分娩したあとで、子宮収縮も良く、産道損傷に対する処置を行ったにもかかわらず、持続的な出血や内出血によるショック症状がみられます。

検査と診断

 出血の原因を調べるために、緊急の内診および超音波診断を行います。同時に、全身状態の評価のために、血圧・脈拍数・血球数算定・凝固能検査なども行われます。さらに必要に応じてCT、MRI検査も行われます。内診では、色調、凝固の有無などの血液性状、産道裂傷・血腫の有無、子宮収縮の状態、とくに痛みを訴える部位がないかどうかをみます。
 出血の原因を特定するためには、出血部位の特定が重要です。超音波では腹腔内の出血の有無を診断します。症状の項で述べたような、各疾患の臨床症状を考え併せて、さらに出血原因を探ります。

治療の方法

 全身状態を改善するための治療と並行して出血に対する産科的な止血処置が必要です。全身の管理としては、出血性ショックやそれに続く産科DICの予防のためにも、輸液、輸血療法が行われます。各疾患ごとの止血処置の詳細については、それぞれの項を参照してください。

分娩後異常出血に気づいたらどうする

 専門医の処置を受けてください。