胎盤遺残とはどんな病気か

 経腟(けいちつ)分娩後の異常出血のうち、胎盤や卵膜の残存物によるものは5〜10%とされています。分娩後、胎盤の大半は5〜6分で娩出されますが、胎盤が完全に娩出されずに子宮内に残留する状態が胎盤遺残で、胎盤全体が残るものと、胎盤の一部が残るものとがあります。

原因は何か

 はがれた胎盤が残るものと、胎盤剥離(たいばんはくり)の異常によるものとがあります。
(1)剥離胎盤の遺残
a.娩出力欠如による遺残
 娩出力が足りないために胎盤の娩出が遅れることがあります。
b.胎盤嵌頓(たいばんかんとん)
 子宮壁から完全にはがれた胎盤が、子宮峡部付近の異常な収縮(内子宮口の閉鎖)によって妨げられ、娩出されない状態です。
(2)胎盤剥離の異常
a.付着胎盤(正常胎盤の剥離不全)
 胎盤が子宮壁に付着している筋層との結合が密でなく、真の癒着(ゆちゃく)ではないものを付着胎盤ということがあります。胎盤遺残の多くはこの付着胎盤です。
b.癒着(ゆちゃく)胎盤
 脱落膜の形成不全あるいは発育不全の子宮壁に授精した卵子が着床して発育すると、絨毛(じゅうもう)は直接子宮筋層内に侵入し、胎盤の一部あるいは全部が子宮壁に癒着します。これを癒着胎盤といいます。

症状の現れ方


(1)胎盤嵌頓

 この病気では子宮峡部付近が収縮し、体部が弛緩することが多く、外出血がみられますが、子宮体腔に大量の出血があっても峡部(きょうぶ)の収縮が強いと血液は子宮外に流れ出ないため、見かけ上はほとんど外出血がみられないこともあります。
(2)癒着胎盤
 症状は、全癒着と部分癒着とで異なります。
a.全癒着
 胎児娩出後も胎盤がまったくはがれないため、出血はみられません。
b.部分癒着
 胎児娩出後、癒着部以外の胎盤ははがれますが、子宮が収縮を妨げられて出血します。癒着した胎盤の小片が子宮内に残ると産褥期(さんじょくき)の出血や産褥熱の原因になります。

検査と診断


(1)胎盤嵌頓

 内診では、内子宮口付近に強い狭窄がみられ、指を通じることが困難な場合もあります。指を通じることが可能な場合は、狭窄部の上方にはがれた胎盤を触れることがあります。超音波断層法では子宮峡部にはがれて嵌頓した胎盤のエコー像がみられ、子宮体部には胎盤の像はみられません。
(2)癒着胎盤
 確定診断は、摘出した子宮または胎盤の病理組織検査によって得られます。

治療の方法


(1)剥離胎盤の遺残
a.娩出力欠如による遺残

 まずは手で子宮輪状マッサージを行い、胎盤が娩出しなければバッカク製剤(マレイン酸メチルエルゴメトリン)の筋肉注射か静脈注射が行われます。それでも娩出しない場合、オキシトシンかPGF2αが投与されます。
b.胎盤嵌頓
 鎮痙(ちんけい)薬(主として臭化ブチルスコポラミン)やトランキライザー(鎮静剤)を使って峡部のけいれんを除いてから、手で胎盤をはがします。
(2)胎盤剥離の異常
a.付着胎盤
 子宮輪状マッサージを行い、胎盤が娩出しなければ、胎盤圧出法、胎盤用手剥離(手ではがす)が行われます。
b.癒着胎盤
 胎盤用手剥離を試みても癒着が強固で剥離が困難な場合、子宮壁を損傷せずに剥離することが不可能な場合、強度の出血を止血できない場合などには、剥離を中止して開腹術が行われます。
 今後の出産を希望しない場合は、子宮全摘除術または腟上部切断術を行います。今後の出産を希望する場合、内腸骨動脈結紮術や子宮動脈結紮術(けっさつじゅつ)で止血できれば、子宮を摘除せずに胎盤を子宮壁に付着させたまま、感染に注意しながら、自然の剥離を待つこともあります。メソトレキセートを使用して絨毛の活性を低下させ、娩出を早めることもあります。

胎盤遺残に気づいたらどうする

 胎盤遺残は胎児の娩出後に起こる頻度が高く、産褥の大量出血で母体の生命に関わる可能性がある疾患です。原因を正確に見極め、おのおのの状態に対して熟練した医師に処置をしてもらう必要があります。