産褥感染症<女性の病気と妊娠・出産>の症状の現れ方


(1)産褥熱
 産褥子宮内膜炎では、産褥2〜3日目ころに、発熱、下腹部痛、子宮の圧痛、悪臭のある悪露(おろ)の流出、軽度の出血の持続がみられます。感染が骨盤腔内へ波及すると臨床症状は重症化し、筋性防御(きんせいぼうぎょ)、ブルンベルグ徴候などの腹膜刺激症状を伴うようになります。会陰の傷、腟壁の傷から感染したものでは、局所の発赤、腫脹(しゅちょう)、圧痛などがみられます。
 敗血症(はいけつしょう)を来すと、発熱を伴いながら急激に全身状態が悪化してショック症状を示し、さらには播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)の症状を併発することになります。

(2)尿路感染
 排尿時痛、残尿感、頻尿(ひんにょう)などが一般的ですが、膀胱麻痺例では特徴的な症状を示さないこともあるので、とくに長時間の分娩後には、尿意、自尿がない時もあります。さらに腎盂腎炎(じんうじんえん)では悪寒(おかん)を伴った弛張熱(しちょうねつ)(高熱が出たり下がったりする)に加え、腰痛などが認められます。

(3)乳腺炎
 乳汁のうっ滞では産褥2〜3日目に硬結、疼痛、発赤および局所の熱感などがみられます。左右両側に起こることが多く、乳管の閉塞部位に一致した乳線が緊満した状態です。時に全身性に発熱することもありますが、熱は37〜38℃のことが多く、24時間以上持続するのはまれです。
 感染性乳腺炎に発展すると、乳房の局所に発赤、腫脹がみられ、疼痛、熱感があり、悪寒を伴った39℃に達する高熱も認められます。腋窩(えきか)リンパ節も腫脹します。膿瘍(のうよう)は乳腺炎の約10%に起こるとされています。膿瘍が形成されてくると、中心部の皮膚が紫色に光沢を帯び、圧痕(あっこん)や波動が認められるようになります。

産褥感染症<女性の病気と妊娠・出産>の診断と治療の方法


(1)産褥熱
 悪露滞留、胎盤・卵膜遺残など感染の原因を除去すると同時に、抗生剤が投与されます。起炎菌の分離特定ならびに薬剤感受性の検査結果が出るまでには数日間を要するため、最初は抗菌スペクトル(効果のある菌種の範囲)の広い薬剤が用いられます。
 広域ペニシリン系、セフェム系が一般的ですが、難治性や重症例には抗菌力の強いカルバペネム系が使われることもあります。一方、ニューキノロン系の抗菌薬も効果があるのですが、乳汁への移行性が高いため子どもへの安全性を考え、投与中は授乳を避けるように指導されます。

(2)尿路感染
 十分な水分摂取と排尿を指導したうえで、抗生剤が投与されます。
 膀胱炎に対してはグラム陰性桿菌(かんきん)に感受性のあるセフェム系の経口投与で十分ですが、抗菌薬の投与前に尿の細菌培養を行い、起因となる菌を特定しておくこともあります。
 腎盂腎炎は急激に発症することが多く、起炎菌や感受性が不明であることが多いため、広域スペクトルをもった抗菌薬を静脈投与することが多いのですが、抗菌薬を投与する前に尿の細菌培養を行っておきます。

(3)乳腺炎
 乳汁うっ滞に対しては、乳房マッサージで乳汁のうっ滞を取り除きます。疼痛が強い場合は鎮痛薬や消炎薬の投与も考慮されますが、細菌感染ではないので、抗生剤は投与されません。
 一方、感染性乳線炎に対しては抗生剤の投与が主な治療法です。起炎菌の情報が得られるまでは、ブドウ球菌を想定した広域スペクトラムのもので、セフェム系や合成ペニシリン系薬剤を選択します。消炎鎮痛薬の投与も行います。膿瘍が形成され、保存的治療に反応しない場合には、切開して排膿を行います。