強迫神経症(強迫性障害)とはどんな病気か

 自分の意に反して、不安あるいは不快な考えが浮かんできて、抑えようとしても抑えられない(強迫観念(きょうはくかんねん))、あるいはそのような考えを打ち消そうとして、無意味な行為を繰り返す(強迫行為(きょうはくこうい))。このような症状を強迫症状といいますが、強迫神経症は、強迫症状を主症状とする神経症の一型です。
 自分でもそのような考えや行為は、つまらない、ばかげている、不合理だとわかっているのですが、やめようとすると不安が募ってきて、やめられないのです。不安が基礎になっている病気なので、不安障害に分類され、強迫性障害(現在ではこのほうが正式)と呼ばれます。

原因は何か

 神経症の一型ですが、神経症の原因とされる心因(心理的・環境的原因)よりも、大脳基底核(だいのうきていかく)、辺縁系(へんえんけい)など、脳内の特定部位の障害や、セロトニンやドーパミンを神経伝達物質とする神経系の機能異常が推定され、発症メカニズムとして有力視されています。ストレスフルな出来事のあとで発症することもありますが、多くは特別なきっかけなしに徐々に発症してきます。
 また、もともと几帳面(きちょうめん)、完璧主義などの性格(強迫性格)の人に多い傾向があります。

症状の現れ方

 強迫観念や強迫行為の内容にはさまざまなものがあります。よくみられるのは、 ・敵意や衝動に関するもの:たとえば「誤って他人を傷つけたり殺してしまったりしやしないか」などの強迫観念 ・不潔や汚れに関するもの:「便、尿、ばい菌などで汚染されたのではないか」などの不潔恐怖を伴った強迫観念、そのため人に近づけない、物に触れないなどの回避行動、触ったあとに何度も手を洗う強迫行為(洗浄強迫) ・詮索癖(せんさくへき):些細なことの理由などをしつこく詮索し、時には質問してまわる ・疑惑癖:自分のしたことが完全だったかどうか、絶えず疑惑が生じてきて何度も確かめないと気がすまない(確認強迫) ・計算癖:物の数や回数が気になって、数えないと気がすまない などです。
 自分で確認するだけでは安心できず、他人、多くの場合、母親などに何度も確認させ、保証を求める「巻き込み型」(他人を巻き込むという意味)といわれるタイプもあり、重症の患者さんに多くみられます。
 強迫神経症の経過は一般に慢性で、青年期に発症してよくなったり悪くなったりしながら、年余にわたって続くのが普通です。また、半数以上にうつ病が合併してくることも特徴で、そうなると患者さんの苦痛はより大きなものとなり、自殺の危険などへの注意も必要になってきます。

検査と診断

 強迫症状はうつ病統合失調症(とうごうしっちょうしょう)など、他の精神疾患でもみられるため、それらとの鑑別が必要です。脳炎、脳血管障害てんかんなど、脳器質性(のうきしつせい)疾患でもみられるので、これらが疑われる場合は鑑別のための検査(血液・髄液(ずいえき)などの検査、頭部CT、MRIなどの画像検査、脳波検査など)が必要になります。
 薬物やギャンブルへの依存症(いぞんしょう)も、「やめなければいけないとわかっていながら、やめられない」という点では強迫性障害に似ていますが、依存症ではその行為に快感を伴うのに対し、強迫性障害では快感はなく苦痛のみである点が異なっています。

治療の方法

 治療法には、薬物療法と精神療法があります。
 薬物ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:フルボキサミン〈デプロメール、ルボックスなど〉)、クロミプラミン(アナフラニール)、ベンゾジアゼピン誘導体(クロナゼパム:リボトリール、ブロマゼパム:レキソタンなど)、症状が重い場合は少量の抗精神病薬も用いられます。有効率は50%前後です。
 精神療法では、「曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)」と呼ばれる認知行動療法が有効です。強迫症状が出やすい状況に患者さんをあえて直面させ、かつ強迫行為を行わないように指示し、不安が自然に消失するまでそこにとどまらせるという方法です。適応が限られ、まだ専門家が少ないのが難点ですが、薬物と同等以上の効果があるといわれています。

強迫神経症(強迫性障害)に気づいたらどうする

 症状に気づいたら精神科を受診しましょう。うつ病統合失調症の初期や、他の病気の可能性もあるので、専門的な診断や検査が必要です。
 家族や身近な人は、患者さんの症状を理解してあげてください。「なぜ、そのようなつまらないことを気にするのか」と思うかもしれませんが、気になること自体が病気なのです。本人の苦痛ははたで見るより深刻で、うつ病を伴いやすいことにも注意が必要です。

関連項目

 うつ病統合失調症