パーソナリティー障害<こころの病気>の診断と治療の方法

 患者さんは情緒的に反応しやすいため、通常の精神療法的接近が困難な場合が少なくありません。そこで今日までさまざまな治療方法が試みられてきました。そのなかで最も今日世界的に用いられているのは弁証法的行動療法(DBT)でしょう。
 これは、認知行動療法と禅の思想を融合させたというユニークな治療方法です。行動療法、個人精神療法、電話相談、薬物療法を多角的に組み合わせて患者さんの自殺や自傷行為を減らし、生活の質を改善しながら、次第に病態の安定化を求めようとするもので、その効果が研究により確認されている数少ない治療方法のひとつです。
 この治療方法の姿に象徴されるように、この障害は何かひとつの治療方法で対応できるものではなく、さまざまな方法を組み合わせて対応していくべきものでしょう。最近の話題としては、薬物療法では最近開発された非定型抗精神病薬が有効であるとの報告が増えています。
 こうした病態への接近は、まず患者さんの作り出す世界に巻き込まれず、一定の心理的距離を保つこと、患者さんの行為の是非を問うのでなく、何がその行為を導いているのかをゆっくり求めていくという姿勢が大切でしょう。
 本障害の治療として最も多く行われるのは、障害に付随した不眠、抑うつ、また身体不調などに関する対処的治療です。この障害自体への治療は、ハインツ・コフートにより開発された自己心理学に基づく精神分析的精神療法が知られています。
 この療法は、患者さんの本来脅かされやすい自己像を、治療者が肯定的に評価し共感を与えていくことにより強化していくものです。数年の時間を要する治療ですが、本障害に特化された治療としては有効な方法であると考えられています。こうした病態への基本的接近は、患者さんが語る空想を否定せず、現実的なことを直視させるより、患者さんがよく機能している部分を評価する方法です。
 本障害の治療は医療刑務所などで、今までさまざまな試みがなされてきました。しかし、その効果については症例数が限られることから必ずしも明らかではありません。
 易怒性(いどせい)、攻撃性については抗精神病薬や気分調節薬、抗てんかん薬が用いられます。また、患者さんの認知のゆがみに関しては認知行動療法が、対人関係の問題については個人精神療法が行われます。
 この障害に特異的な治療は存在しません。実際の臨床では、外来での精神療法が中心となります。主治医と相談しながら、自分自身の問題として症状を認識して、過度の自己評価の低下による認知のゆがみを修正していくことが必要です。また、併存する不安、抑うつ、社会恐怖、不眠などに対処的治療が行われます。