言語発達障害および学習障害(特異的発達障害)とはどんな病気か

 ともに、子どもの発達段階の早期、主に幼児期に明確になってきます。明らかな知的遅れ(精神遅滞(せいしんちたい))がないのに、学習面のある特異な領域に明らかな遅れが認められることを総称して、特異的発達障害といいます。特異な領域とは、言葉の表現や理解、文字を書くこと、文字を読むこと、計算すること、運動することなどで、遅れはそれらのひとつ、あるいは複数の領域にわたります。
 遅れを示す主な領域によってそれぞれ、言語発達障害あるいは発達性言語遅滞、発達性書字(しょじ)障害、発達性読字(どくじ)障害、発達性計算障害、発達性協調運動障害などと呼ばれています。
 多くの場合、単に学習面の特異な遅れだけではなく、多少なりとも対人関係上の問題や行動上の問題も認められます。

原因は何か

 これらの発達段階での学習面の遅れは、脳機能上の特異的な障害に基づいていると推定されていますが、明確な根拠はありません。この疾患を疑うには、視覚や聴覚などの感覚器官に異常がないこと、明らかな身体運動機能の障害がないこと、もともと統合失調症(とうごうしっちょうしょう)や自閉症(じへいしょう)などのはっきりした精神障害がないこと、明らかに不適切な養育環境に置かれていないことなどの条件を満たすことが必要です。

症状の現れ方

 いくつかのタイプに分けられていますが、乳幼児期の発達経過のなかでよく認められる特徴には共通点も少なくありません。
乳児期
 生後半年くらいはほとんど異常が認められないことが多く、お母さんなどのあやしかけによく反応し、よく甘えていたということが多いようです。しかし、通常、人見知りやあと追いがみられる時期になってもそれがみられず、誰にでもすぐなつき、愛想がよいといわれたりします。一方、簡単な身ぶりのまねを促しても、なかなかのってこなかったりします。
幼児期早期
 幼児期の早期は、発語が遅れることが多く、聴覚障害の疑いがもたれることもありますが、話し言葉以外の音の刺激にはよく反応するため、聴覚障害は否定されます。話し言葉の理解はよくても発語がうまくできなかったり、相手の話におよその見当をつけて反応しますが、実際には正確に指さしができなかったり、自分の意思を言葉で表現できなかったりします。
 さらには、歩行開始が遅れたり、歩けるようになってもひどくぎこちなく、よく転んだりする場合もあれば、はいはいの時期があまりなく、歩き始めも早くて、歩き出すとじっとしていることがなく、母子の間でゆったりとした交流がもてなかったりします。
 話し言葉は理解できなくても、相手の身ぶりをみて相手の意思を読み取ろうとしたり、みずからも身ぶりで意思を伝えようとする仕草がみられることもあります。
幼児期後期
 幼児期の後期は、落着きのなさがひどくなり、じっとしていられず、始終動き回ります。ささいな刺激にもすぐに反応して、集中力がなく、何かをさせようとしてもすぐにほかのことに気が移りやすくなります。集団遊戯(ゆうぎ)にもなかなか参加できず、自分勝手なひとり遊びに逃げ込みやすいところがあります。その場にも多少慣れて遊戯ができるようになっても、うまくできず、すぐにほかのことに逃げ込んでしまったりします。
 情緒面でも不安定で、かんしゃくを起こしやすかったり、衝動的に突発的な行動をすることもあります。とくに集団生活のなかで不適応が顕著になってくると、そのような場面がみられやすくなります。
学童期
 学童期になると、多少なりとも落ち着いてきますが、学習面での特有な障害が顕著になってきます。本を読んだり、文字を書いたり、計算したりする能力の獲得に著しい困難を示すようになります。一つひとつの文字は読めても文章の内容の理解が難しかったり、数字は読めても、物の数は数えられなかったり、工作や体育が苦手だったりします。
 子ども自身に苦手意識が芽生えてくると、そのような課題に対して回避的になり、生活面でさまざまな問題が生じてくるようになります。大人との間ではある程度うまく振る舞うことができても、同年齢の子どもとの交流は困難であることがほとんどで、次第に集団のなかから孤立するようになります。そうなると、被害的な気持ちをもち、他の子どもに対して攻撃的行動を示すこともあります。

検査と診断


(1)家族歴、既往歴の検討

 遺伝や周産期障害などが原因のひとつとして考えられており、血縁者に類似の障害(言葉や学習能力の遅れ、不器用な子など)をもった人の有無や、胎生期(たいせいき)の異常の有無、新生児期の生育状況、乳児期の既往症(とくに中枢神経系に影響を及ぼす可能性のある疾患)などをチェックします。
(2)精神発達の経過
 前述した発達経過の特徴と照らしあわせることが重要です。
(3)検査
 認知機能の障害像を客観的に把握するために、さまざまな検査が行われます。具体的には、神経心理学的検査(身振り模倣(もほう)検査、人物像描画法(びょうがほう)、ベンダー・ゲシュタルト・テストなど)、ウェクスラー知能検査(WISC‐IV)、ITPA言語心理能力検査などがよく行われています。

治療の方法

 何らかの脳の機能障害に基づくハンディキャップをもつと考えられるため、従来の狭い医療の枠内で考えるのではなく、子どもの精神発達全般にわたって、どうすれば好ましい方向に行くのかを基本に考えます。そのためには、子どもの障害を把握することはもちろん、生育史の特徴、家族背景、現在置かれている社会的環境なども考慮に入れます。
 とくに大切なことは、子どもの示す症状は決してわがままや育て方によって起こったものではなく、生来的なハンディキャップをもつ子どもなのだとみなして対応する基本的態度を、家族や周囲の人がもつことです。そうした認識のもとに、子どもの環境を整えていくことが必要です。
 具体的な治療の方法としては、身体運動訓練、言語指導、学習訓練などをその子どもの障害に合わせて適度に組み合わせて行うとともに、時には多動(たどう)の改善を目的に薬物療法(メチルフェニデート:コンサータ)を併用することもあります。
 多くの場合、子どもと養育者との間の情緒的な心のつながりが希薄になりやすいので、訓練に主体を置くのではなく、子どものこころの成長に主眼を置いたはたらきかけを目指します。本人への精神療法的援助や家族へのカウンセリングも大切です。

言語発達障害および学習障害(特異的発達障害)に気づいたらどうする

 発達障害が疑われたら、専門家による診断を受けることが望まれます。ただし治療は専門家にまかせるのではなく、あくまでも子どもが現在暮らしている場での生活を保証しながら、個別的に配慮することが必要です。
 具体的には、言語発達のレベルに合わせた言葉かけをしながら、集団遊戯はその子に合わせた簡単な課題から取り組めるように工夫して、温かく励ましながら少しでも成功した喜びを体験させるなど、子どもの意欲を高めて自発性が育っていくように心がけます。
 時に、専門家から学習面だけでなく情緒面のチェックを受けながら、園や学校の担任との連携をとって子どもにはたらきかけてゆくことが大切です。多動や情緒障害が著しく、はたらきかけが困難な時には、児童精神科医による薬物療法が必要になることもあります。