刺創とはどんな外傷か

 刺創とは、汚染された包丁やナイフなど先端の鋭利な刃物や、アイスピック、錐(きり)、針、釘(くぎ)、鉛筆、箸(はし)などの器物が先端から刺入することによって生じる創(そう)です。「創」とは、皮膚の皮下組織や筋肉などにまで達した傷のことです。
 刺創は、刺入部の大きさに比べて奥行きが深く、深部の血管、神経、腱(けん)や重要臓器を損傷する場合がよくあります。呼吸などの体動により、器物が刺入部を支点に創内で動き、損傷の拡大や出血の増加を起こす可能性があります。また、器物を引き抜いた場合、創内にその断片が残ることがあるため、医療機関を必ず受診しなければいけません。
 四肢では、神経や腱の切断・損傷があると、受傷部より先の運動・知覚の麻痺が生じます。血管の破綻(はたん)があると止血が困難で血腫(けっしゅ)ができ、これが病原微生物の巣となって重い感染症をまねくことがあります。胸部、腹部などの体幹では、重要臓器の修復と止血、感染症のコントロールを目的に手術が必要になることがあります。
 とくに感染症では、生命に関わるガス壊疽(えそ)破傷風(はしょうふう)などの嫌気性菌(けんきせいきん)(酸素が少ないところで繁殖する細菌)によるものがあげられます。これらの感染症の予防として、消毒、抗菌薬の適切な使用、破傷風トキソイドワクチンの接種が必要になります。

応急手当

 必ず医療機関を受診します。救急隊を要請し、救急処置、搬送をしてもらいます。救急隊を待つ間、損傷の範囲を拡大させないことが重要で、傷病者の安静を保つことに主眼をおきます。器物が刺さったままであれば、引き抜かないことを原則とします。器物と破綻した血管が接解し、止血していたものが再出血する可能性があるからです。
 救急隊の到着に時間がかかる場合、刺入部の周囲にタオルや布を巻きつけ、その上からガムテープなどを用いて皮膚に接着・固定させます。器物が抜けてしまった場合で出血があれば、前に解説した「切創(せっそう)」と同様の止血をします。
 出血がなければ、食品包装用のラップを刺創に密着させ、おおってもよいでしょう。胸部ではラップを四角に切り、下側の辺以外の3辺をテープで固定します。腹部では、両膝を曲げて立て、腹筋の緊張をゆるめるようにしておおいます。また、腸管が体外に脱出した場合は、乾燥させないように家庭にあるシャワーキャップでおおうのもひとつの方法です。

医療機関における治療

 さまざまな検査で、刺創の損傷範囲を把握します。四肢では、運動・知覚麻痺の有無、関節の可動域の制限や持続する出血を指標に修復を行います。
 胸部では、単位時間あたりの出血量や、呼吸数・血圧・脈拍数・体温(この4項目を生命徴候という)が安定しなければ緊急手術となります。
 腹部では、腹腔中から腸などの臓器や組織の脱出があったり、生命徴候が不安定であれば緊急手術が必要です。
 刺創は、汚染された器物が体内に刺入しているため感染は避けられません。創腔が十分に洗浄できない場合、前述の感染症の発症に注意し、対策を講じます。