脳の損傷が疑われる場合

 頭部外傷で重要なことは、脳の損傷の有無です。まず、けが人の意識を確かめます。大声で呼んでも眼を開けず会話することができなければ、意識がないと判断して脳の損傷を疑います。この際、大きく体を揺さぶってはいけません。乳幼児で激しく泣いている場合は、意識があると考えてよいでしょう。
 このほか何回も吐いたり、けいれん発作(手足をがくがく動かす、あるいは手足をピーンと突っ張り、この間は呼びかけても反応がない)が起こった時も脳の損傷を疑います。脳の損傷が疑われた場合はすぐに救急車を呼びます。
 交通事故などの場合は、次にけが人に危険が及ばないように、道路上の安全を確保します。頭部外傷では頸椎(けいつい)(首の骨)も損傷している危険があるので、けが人は、けがをした場所から不用意に動かさないようにします。もしも、けが人が吐いたら、すぐに顔を横に向けて、吐物がのどに詰まって窒息しないようにします。

頭部からの出血がある場合

 頭皮は血管に富むため、手足の傷に比べると出血が多い傾向があります。しかし、成人では頭皮からの出血だけで命に関わることはまずないので、あわてずに清潔なハンカチやタオルを当て、圧迫止血(あっぱくしけつ)(止血法と創(そう)処置の原則)を行います。
 出血がほぼ止まったように見えても、傷の深さや大きさは髪の毛でおおわれているためわかりにくいので、流れるほどの出血があった時は脳神経外科を受診したほうがよいでしょう。
 乳幼児や高齢者では出血が多いと命に関わることがあるので、傷に当てたハンカチやタオルに出血が広がってくるようなら、すぐに救急車を呼びます。

頭部打撲の場合

 意識がはっきりしていて出血もなければ、頸椎に損傷がないことを確認します。 (1)両手足に力が入る。 (2)両手足にしびれがない。 (3)首の後ろを触っても痛がらない。
 以上の3つとも問題がなければ、けが人を静かに動かして寝かせ、様子を観察します。ただし、ひとつでも異常がある時やけが人がこれらの質問にはっきりと答えられない時は、けが人を動かさずにすぐに救急車を呼びます。
 様子の観察は最低3時間、それ以後は症状によりますが通常は24時間行います。高齢者や、血を固まりにくくする薬を医師から処方されている場合は、2〜3日間注意が必要なこともあります。
 頭をぶつけただけでも(とくに幼児は)吐きやすくなるので、食事はひかえめにします。また、当日の入浴は避けてください。


 様子の観察では、表2のような症状の出現に注意して、該当する場合は救急車を呼ぶか救急病院に連絡します。受傷翌日、とくにいつもと変わりなく、食事もできて嘔吐もなければ、まず今回の頭部外傷については心配ありません。ただし、中高齢者(おおむね50〜60歳以上)は慢性硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)の可能性がまれにあるので注意が必要です。