頭蓋底骨折とはどんな外傷か

 頭蓋骨の底面である頭蓋底は、でこぼこして多くの孔(あな)が開いている複雑な構造をしています。そのため頭蓋底骨折は、頭蓋冠(ずがいかん)(椀を伏せた形のドーム型の部分)の線状骨折や陥没骨折とは病態も治療方針も異なります。頭蓋底骨折の問題点として、主に髄液漏(ずいえきろう)と脳神経麻痺(のうしんけいまひ)の2つがあります。
 髄液漏とは、頭蓋底骨折をとおしてなかの脳脊髄液がもれ出てくる状態です。出てくるのは耳の穴(髄液耳漏(ずいえきじろう))か鼻の穴(髄液鼻漏(ずいえきびろう))で、髄液漏では頭蓋内(頭蓋骨よりも内側)に細菌が入って髄膜炎(ずいまくえん)を起こす危険があります。また、髄液が流れ出る代わりに空気が頭蓋内に入る気脳症(きのうしょう)を起こすこともあります。
 頭蓋底の孔の多くには、脳から出て顔面や内臓に至る脳神経がとおっています。この孔に骨折が及ぶと、なかをとおっている脳神経を傷つけて脳神経麻痺を来すことがあります。

原因は何か

 頭蓋冠の骨折と同じく、骨折部位への直接の衝撃が原因です。
 頭蓋冠の骨折が頭蓋底にまで及ぶ場合と、眉部(びぶ)の打撲(だぼく)による前頭蓋底(ぜんずがいてい)骨折、耳介後部(じかいこうぶ)の打撲による側頭骨(そくとうこつ)(錐体骨(すいたいこつ))骨折などがあります。

症状の現れ方

 当初は髄液漏として認められる場合がほとんどです。脳脊髄液(のうせきずいえき)は無色透明ですが、髄液漏では出血を伴っていることが多く、少量でもさらさらした出血は危険な徴候です。顔面打撲に伴う鼻出血との区別は時として困難ですが、どろどろした出血が徐々に止まってくれば、髄液漏の疑いは低いといえます。
 目のまわりが黒くなる「パンダの目」徴候や、耳の後ろの生え際が黒くなる「バトルサイン」は、頭蓋底骨折を疑う徴候とされています。
 脳神経麻痺は遅れて現れることもあり、頭蓋底骨折と診断された場合には受傷後1週間は要注意です。
 前頭蓋底骨折では嗅覚(きゅうかく)障害側頭骨骨折では受傷側半分の顔面の運動麻痺や聴覚障害が現れます。前頭蓋底骨折のひとつである視神経管(ししんけいかん)骨折では、視力障害を来します。

検査と診断

 X線写真や頭部CTでは骨折の診断が難しいことが多く、髄液漏があれば頭蓋底骨折と診断されます。CTにおける気脳症の所見は、髄液漏の存在を示します。髄液漏では耳あるいは鼻の穴から無色透明な液体、あるいはさらさらした血液が流れ出ます。髄液鼻漏では鼻汁との区別が必要になることがあり、簡便には試験紙で髄液の成分(糖)を検出します。
 側頭骨骨折は、局所の精密なCT(側頭骨ターゲットCT)で診断されます。視神経管骨折は、局所の精密なCT(眼窩(がんか)CT)、あるいはMRIにより診断されます。

治療の方法

 頭蓋底骨折に伴う髄液漏あるいは脳神経麻痺に対する治療が行われます。
 髄液漏に対しては、1〜3週間程度の絶対安静により頭蓋底からの髄液の流出を抑え、癒着による漏孔の自然閉鎖を期待します。外傷性髄液漏の50〜80%は1〜3週間以内に自然に止まるとされています。また、髄膜炎に対する抗生物質の点滴注射を行うことがあります。腰から脳脊髄液を抜く処置を併用する場合もあります。
 日本のガイドラインでは、1〜3週間の絶対安静を行っても髄液漏が止まらない時や、いったんは止まった髄液漏が再発した場合、髄液漏が遅れて起こった場合を手術適応の基準としており、開頭硬膜形成術(かいとうこうまくけいせいじゅつ)(断裂した硬膜の縫合閉鎖)が行われます。内視鏡を用いた経鼻的修復術が行われる場合もあります。
 脳神経麻痺に対しては、傷ついた脳神経の障害を抑えるため、通常はステロイド薬などによる薬物療法が行われます。
 視神経管骨折側頭骨骨折に対しては、骨折による脳神経の圧迫・損傷を取り除くため、手術が行われる場合があります。
 脳神経麻痺の予後は、損傷を受けた脳神経の種類により異なります。