脾臓損傷とはどんな外傷か

 過去には、脾臓は虫垂(ちゅうすい)と同様に罪の意識なくして摘出できる無益な臓器と考えられていました。しかし、脾臓の免疫学的役割が解明されてからは、脾臓損傷に対する治療はできるだけ脾臓を温存するような方法を選択すべきであるとする考え方に変化してきています。
 脾臓は手のひらの大きさしかありませんが、腹部の実質臓器の損傷のなかでは肝臓の損傷に次いで発生頻度が高く、約12%を占めています。

原因は何か

 脾臓は下部肋骨に囲まれているため、刺創(しそう)や銃創(じゅうそう)によって損傷を受けることは少なく、多くは交通事故や転落外傷が原因になります。
 後者の発生要因としては、肋骨骨折端による損傷、前方からの外力による圧挫(あつざ)(圧迫による組織の挫滅(ざめつ))などがあげられます。

症状の現れ方

 脾臓の損傷自体による特徴的な症状はほとんどみられません。左上腹部から左側胸部にかけての打撲痕(だぼくこん)、左横隔膜(おうかくまく)下にたまる血液の刺激による左肩痛、脾臓の内側に位置する胃粘膜の損傷による吐血などの間接的な症状・所見に加えて、出血性ショックによる血圧低下がみられるならば脾臓損傷が疑われます。

検査と診断

 前記の症状・所見に加えて、胸・腹部単純X線写真による左下部肋骨骨折、左横隔膜挙上、胃の圧排(あっぱい)像(血腫による左方に偏位)などがみられる時は脾臓の損傷を疑い、腹部超音波検査を行います。これにより脾臓の損傷を診断すると同時に腹腔内出血の程度も同時に把握します。
 もしも、輸液により血圧が安定するならば、腹部造影CTで、より詳細な損傷形態を把握することができます。

治療の方法

 輸液により血圧が安定すればCT検査を行い、造影剤が脾臓の外に漏れていないかどうかを観察します。造影剤が漏れていなければ保存的(安静と輸液・輸血)に経過を観察することができます。造影剤の漏れがみられる時は、患者さんを血管撮影室に移して、脾臓動脈塞栓術(コイルなどを用いて出血している動脈を詰めて止血する方法)を行います。
 大量輸液の投与によっても血圧が安定しない時には緊急手術を行うことになります。
 脾臓は遅発性破裂を起こしやすいので、非手術的治療を行ったときは、厳重に経過を観察しなければなりません。