腹部大血管損傷とはどんな外傷か

 腹部大動脈とその主要分枝および下大静脈や上腸間膜(じょうちょうかんまく)静脈など血流量の多い静脈を損傷した場合は、出血性ショックのため受傷現場で亡くなることが多くなります。
 大動脈損傷のうち、救急外来において血圧が触れる患者さんは全体の3%にすぎません。これらの患者さんを救命するためには、搬送時間の短縮、的確な初期治療と早期手術の決断、血管外傷に習熟した外科医による手術などが重要になります。

原因は何か

 米国と異なり、日本では交通事故により損傷することが多くなっています。とくに、ハンドル、ダッシュボード、シートベルトによる直達外力や間接外力(減速力、慣性力)が要因になることがほとんどです。

症状の現れ方

 腹腔内に大量出血をもたらす時には、受傷現場あるいは搬送中に心肺停止になります。
 出血部位が後腹膜腔(こうふくまくくう)の血腫でおおわれていて辛うじて止血されているか、比較的緩やかな出血の時には、救急外来到着時に血圧を触れることがあります。このような時には、救命される確率が高くなります。

検査と診断

 診断より、救命処置が優先されます。数カ所に血管を確保して、急速に輸液を開始します。
 手術で必要とする輸血用の血液を準備すると同時に、腹部の超音波検査を行い、血腫の位置から損傷血管を推定したら、ただちに患者さんを手術室に移送して手術を開始します。

手術の方法

 大血管損傷を手術する時に大切なことは、損傷血管に対するアプローチと損傷血管の修復をいかに上手に行うかの2つです。
 このような損傷の手術成績を向上させるためには、血管損傷の手術に習熟している外傷外科医か血管外科を専門とする外科医が手術を行う必要があります。