原因は何か、症状の現れ方

 女性性器損傷の主な原因には、外陰部打撲(がいいんぶだぼく)と性交の2つがあげられます。
 外陰部打撲は自転車転倒事故、鉄棒、スノーボードなどで外陰部を強打したために発生することが多く、大部分は外陰の血管が断裂して局所に出血し、外陰血腫(がいいんけっしゅ)となり、腟の深部に裂傷をみることは少ないようです。患者は外陰部の疼痛と血腫による違和感や、外陰の出血を訴えて来院することが多い傾向にあります。
 一方、性交による性器損傷は暴力的性交、強姦、性交初体験、器物使用による性交および自慰行為などにより発生し、腟入口部から腟円蓋(ちつえんがい)の深部まで幅広い腟の裂傷の形をとります。多くは、性交後の出血と疼痛を訴えて来院します。

検査と診断



 外陰部打撲による外陰血腫は、外陰部強打の事実と視診による外陰部の血腫の確認で容易です。性交による性器損傷は外陰部に異常がみられない場合もしばしばあり、腟鏡により裂傷部位を確認することが大切です。性交裂傷ができやすい部位を図49に示します。
 強姦などの性的犯罪が関係した性器損傷である場合、警察の捜査や裁判の証拠にカルテが使用される可能性があるので、詳細かつ正確に記録を残します。性的犯罪の場合、性器だけでなくまず全身を観察し、打撲傷、点状・斑状出血の有無と部位をカルテに記載しておきます。
 性器では裂傷部位の大きさや状態を正確に観察して記載するとともに、腟や子宮頸管(けいかん)から分泌物を採取し、顕微鏡で精子の有無を観察します。通常、性交後、精子は腟内では8時間まで、頸管内では2〜3日の間、運動性を保っています。精子が確認できても、カルテには強姦や性的犯罪と断定した診断名を書かないで、あくまでも「疑い」とします。

治療の方法

 外陰血腫では、外陰部の消毒後、局所麻酔を注射し、次いで皮膚を切開し血の塊を除去します。出血部位が確認できればしばって止血し、ドレーンを挿入して縫合します。処置後は抗菌薬を数日間投与し、ドレーンは出血がなければ数日で抜き取ります。
 腟壁裂傷では、裂傷部位の消毒、局所麻酔を行い、吸収糸(抜糸しなくても自然に吸収される糸)で縫い合わせます。この際、視野を十分に取り、縫合は裂傷部位の端より奥のほうから行います。外陰血腫の場合と同様、抗菌薬の投与を数日間行います。
 性的犯罪の場合、婦人科的な処置だけにとどまらず、精神的トラウマに留意し、精神科やケースワーカーと連携をとりながらフォローアップをしていきます。