本態性低血圧症とはどんな病気か

 安静時(座位)に収縮期血圧が100mmHg未満を示し、低血圧の原因が明らかでない時に本態性低血圧症といいます。日本では1・5〜7%の人にみられ、そのうち自覚症状を訴える人は約10〜20%といわれています。
 症状がない場合は検診や人間ドックで発見されることが多く、全身の倦怠感(けんたいかん)や肩こり、不眠、寝起きが悪いなどの症状があって血圧を測って発見されることも多いようです。

原因は何か

 血圧低下の原因となる心拍出量(心臓から送り出す血液量)の低下や、循環血液量および末梢血管(細かい血管)抵抗の減少は、心臓の機能や摂取する水分量によって影響されます。また、自律神経の機能にも影響を受けやすく、とくに心拍出量や末梢血管の抵抗は交感神経の緊張によって増大し、血圧の維持に大きく関係します。
 一方、副交感神経の緊張は逆の作用を有し、血圧低下の原因になります。この点、本態性低血圧症では明らかな原因疾患は認められませんが、自律神経の調節がうまくはたらかず、副交感神経が優位になっていたり、血管の反応性が低下しているために正常血圧を維持できないと考えられています。

症状の現れ方



 本態性低血圧症では10〜20%の患者さんに症状が認められます。低血圧に伴う血流量の低下による全身症状や各臓器症状が認められ、また精神・神経症状や自律神経症状(不定愁訴)もみられます(表10)。

検査と診断

 本態性低血圧症では急激な発症をとらず慢性の経過を示すため、症状の有無にかかわらず、安静時に低血圧が持続して原因疾患が明らかでない場合に診断されます。
 起立性低血圧を合併しない場合は体位との関連はなく、また神経調節性反射による低血圧との鑑別には、長時間の立位や胸痛・腹痛の出現、排尿・排便・咳と関係なく低血圧が認められることがポイントです。
 さらに、症候性(しょうこうせい)低血圧症との鑑別には、原因疾患の検索のため、血液一般検査、心電図、X線検査、各種内分泌検査などの精査が必要となります。

治療の方法



 低血圧を示しても、自覚症状を認めない場合や日常生活に影響を及ぼす症状がみられない場合は治療の必要はなく、愁訴が強い場合に治療が必要になります。治療法としては、精神療法や生活指導が重要であり、それでも効果が認められない場合は薬物療法が必要となります(表11)。

本態性低血圧症に気づいたらどうする

 本態性低血圧症の場合は、それほど病的な意義は少ないのですが、症候性低血圧との鑑別が重要なので、愁訴が持続する場合は専門医(内科)へ受診して精密検査を行う必要があります。
 とくに、急に症状が出現した場合は症候性低血圧症の可能性が高いため、注意を要します。