心臓弁膜症とはどんな病気か



 心臓には僧帽弁(そうぼうべん)、三尖弁(さんせんべん)、大動脈弁(だいどうみゃくべん)、肺動脈弁(はいどうみゃくべん)の4つの弁があります(図9)。僧帽弁は左心房と左心室との間に、三尖弁は右心房と右心室との間に、大動脈弁は左心室と大動脈との間に、肺動脈弁は右心室と肺動脈との間にあります。僧帽弁と三尖弁は房室弁(ぼうしつべん)、大動脈弁と肺動脈弁は半月弁(はんげつべん)と呼ばれています。
 それぞれの弁のはたらきは部屋のドアと同じと思ってよいでしょう。房室弁の場合は、血液が心房から心室に流入する時には開かれ、心室から動脈に血液が押し出される(駆出(くしゅつ))時には閉じられて、血液が心房に逆流してしまうのを防いでいます。半月弁の場合は、血液が心室から動脈に押し出される時に開かれ、駆出が終わると閉じられて、血液が心室に戻ってしまわないようにします。
 このように心臓の各弁は、血液を効率よく循環させるために非常に大切なはたらきをしています。この弁のはたらきが損なわれる病気が心臓弁膜症です。
 心臓弁膜症には、血液の流入や駆出が損なわれる狭窄症(きょうさくしょう)(ドアが十分に開かなくなった状態)と、血液の逆流が起こってしまう閉鎖不全症(へいさふぜんしょう)または逆流症(ぎゃくりゅうしょう)(ドアがきちんと閉まらなくなった状態)の2つがあります。双方が同時に存在することもあります(狭窄症兼閉鎖不全症)。
 心臓の4つの弁それぞれに狭窄症と閉鎖不全症がありますが、損なわれる頻度が多いのは僧帽弁と大動脈弁です。2つ以上の弁が同時に侵されることもあり、その場合は連合弁膜症(れんごうべんまくしょう)といいます。

原因は何か

 先天性と後天性があります。後天性のものにはリウマチ熱が原因になるリウマチ性心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)(関節リウマチとは別の病気です)が代表的ですが、ほかにも各弁膜症ごとにいくつかの原因があります。
 ここで、リウマチ性心臓弁膜症を理解するためにリウマチ熱について簡単に解説します。リウマチ熱は、溶連菌(溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん))という細菌感染が原因になります。この細菌は咽頭炎(いんとうえん)や上気道感染を引き起こしますが、リウマチ熱はこのようなかぜの症状のあと、1〜5週間の潜伏期を経て発症します。好発年齢は6〜15歳で、発症には自己免疫的機序(仕組み)が関係します。症状は発熱、リンパ節腫脹(しゅちょう)(はれ)、心炎、関節炎、舞踏病(ぶとうびょう)などで、リウマチ性心臓病は心炎が原因になります。
 リウマチ熱の治療にはペニシリンを用いますが、最近はリウマチ熱そのものがまれな病気になってきています。なお、溶連菌感染症には、リウマチ熱のほかに扁桃炎(へんとうえん)や急性腎炎、猩紅熱(しょうこうねつ)などがあります。

症状の現れ方

 症状は心不全症状です。また、個々の弁膜症に特徴的な症状がありますが、それぞれの項で解説します。

検査と診断

 聴診や心音図、胸部X線検査、心電図による検査を行います。最近は心エコー(超音波)検査が非常に進歩し、ほとんどの弁膜症を生体を傷つけることなく診断したり、重症度を判定したりすることができます。
 心エコー検査には胸の上から行う通常の方法と、胃の内視鏡のように食道から行う方法があります(経食道心エコー法)。心臓カテーテル検査が必要になることもあります。

治療の方法

 薬物による内科的治療と外科手術とに大きく分けられます。心不全症状がある場合には、利尿薬やジギタリス製剤を内服します。安静時にも症状があったり、胸水や浮腫(むくみ)がひどい時には、入院して利尿薬の静脈注射やカテコラミン製剤の点滴などを行います。
 手術するかしないかは、学会で定められたガイドラインに従って判断していきます。

心臓弁膜症に気づいたらどうする

 症状が何もなくても検診などで異常を指摘された場合には、一度は循環器専門医の診察を受け、最低限、心エコー検査を行うべきです。症状がある場合には、循環器専門医による治療が必要です。
 一般的な生活上の注意は、十分な休養と塩分の制限です。どのくらい運動できるかは個人により異なるので、主治医にたずねてください。