僧帽弁狭窄症とはどんな病気か

 僧帽弁が狭窄して十分に開かれなくなるために、左心房から左心室に血液が流れ込みにくくなってしまう病気です。

原因は何か

 ほとんどがリウマチ熱の後遺症として、リウマチ熱に罹患後、少なくとも2年以上かけて発症します。すなわち、慢性的な炎症性の変化により、弁や弁の周囲組織の癒着(ゆちゃく)や肥厚、石灰化が起こって次第に弁口部の狭窄(きょうさく)が生じます。この結果、左心房には血液のうっ滞(たまること)が起こり、左心房が拡張します。

症状の現れ方

 弁口の狭窄が進行し、1・5cm2以下(正常の弁口面積は4〜6cm2)になると、動作時の息切れや呼吸困難といった心不全症状が現れやすくなります。これは、弁の狭窄により心拍出量が減ってしまうためだけではなく、左心房での血液のうっ滞のために肺からの血液が心臓にもどりにくくなり、肺動脈圧が上昇すること(肺高血圧(はいこうけつあつ))が大きな要因です。
 さらに狭窄が進行し1・0cm2以下の重症になると、肺のうっ血が起こるようになります。うっ血とは通常より多くの静脈血がうっ滞することで、肺のうっ血が生じると、あお向けになると苦しくて上体を起こしてしまうようになったり(起座呼吸(きざこきゅう))、夜中に突然苦しくなったり(夜間発作性呼吸困難)、喀血(かっけつ)したり、心臓喘息(しんぞうぜんそく)(心不全による喘鳴(ぜんめい))を起こしたりします。さらにこのようなうっ血状態が長く続くと胸水がたまったり、三尖弁閉鎖不全症(さんせんべんへいさふぜんしょう)、肝腫大(かんしゅだい)、浮腫(ふしゅ)、腹水(ふくすい)といった症状も現れるようになります。
 また、以上のような心不全症状は、僧帽弁狭窄症に合併しやすい心房細動(しんぼうさいぼう)という不整脈が起こると、より悪化します。心房細動が慢性化すると、もうひとつの大きな問題として、左心房内、とくに左心耳(さしんじ)という場所に血栓ができやすくなります。この血栓は塞栓症(そくせんしょう)を引き起こし、脳梗塞(のうこうそく)などの原因になります。

検査と診断

 聴診(心音図検査)、心電図、胸部X線検査を行います。心エコー(超音波)は最も重要な検査で、正確な診断だけではなく重症度や合併症の有無を評価できます。経食道心エコー法は左房内血栓の検出に有効です。手術するかどうかの決定には、心臓カテーテル検査が必要になることがあります。

治療の方法

 薬物治療は、心不全症状があれば一般的には利尿薬やジギタリス製剤を用います。心房細動を合併した場合には、まず元の正常な脈(洞調律(どうちょうりつ))にもどすことを試みますが、心房細動が続いたり慢性化した場合には、塞栓症の予防を行います。これにはワルファリンを内服する抗凝固療法が最も有効とされています。
 ワルファリンはPT‐INRという血液検査の値が2〜3になるように投与量を調整します。ワルファリンを服用している場合には、外傷や食品などに対していくつかの生活上の注意があるため、主治医や薬剤師の説明をよく聞いてください。たとえば、ワルファリン服薬中は納豆を食べてはいけません。また、ワルファリンとアスピリンをよく混同している人がいます。
 薬物治療を行っても心不全症状がある場合、塞栓症の病歴がある場合、弁口面積が小さい場合(一般的には1〜1・5cm2以下)には、外科手術(交連切開術または弁置換術)か、カテーテルを用いた交連切開術を行います。カテーテル法は開胸手術に比べれば簡便ですが、すべての人に行えるわけではありませんし、再発の問題もあります。また、行える施設も限られています。