心筋炎とはどんな病気か



 心筋自体に炎症細胞の浸潤(しんじゅん)が生じる病態を指しますが(図11)、一般に急性心筋梗塞(しんきんこうそく)によるものは除きます。多くは急性の経過で発症しますが(急性心筋炎)、まれに慢性の経過で進行する患者さんもいます(慢性心筋炎)。

原因は何か



 コクサッキーやエコーなどのウイルス、細菌などの病原微生物の感染が原因になることがありますが、原因のわからない特発性の場合も多くみられます(表18)。
 膠原病(こうげんびょう)などの全身性疾患に伴う心病変として起こることもあり、時に薬物や放射線などによって引き起こされる場合もあります。

症状の現れ方

 急性心筋炎の場合、発熱、鼻水、咳などの感冒(かんぼう)(かぜ)様症状、下痢、腹痛などの消化器症状に引き続き、さまざまな程度の心症状を示します。軽いものでは、動悸や胸部不快感、心膜炎を合併すれば胸の痛みなどが現れます。
 重症化すると、呼吸困難や苦しくて横になれないなど急速に進行する心不全、血圧低下や意識障害などのショック状態を示す場合もあります。重篤な不整脈(ふせいみゃく)により失神したり、心停止を起こすこともあり、突然死の原因になる場合があります。

検査と診断

 血液検査でCRP上昇、赤血球沈降速度亢進、白血球増多などの炎症所見や、クレアチンフォスフォキナーゼなど心筋逸脱酵素(しんきんいつだつこうそ)の上昇が認められます。
 心電図変化は多彩で、比較的短期間に変化するので注意が必要です。心膜炎を合併すれば広範な誘導でST上昇を認め、重症の場合は高度房室(ぼうしつ)ブロック心室頻拍(しんしつひんぱく)などのさまざまな不整脈がとらえられます。
 心臓超音波検査では、心臓の壁運動異常の重症度、心室壁腫大(しんしつへきしゅだい)や心膜液貯留(しんまくえきちょりゅう)の程度が判別でき、時間を追った経過観察が可能です。
 ウイルス抗体価は急性期と回復期に2回採血して、その変化を調べます。
 急性心筋梗塞との区別が必要な場合もあり、確定診断のために冠動脈造影と心筋生検(組織の一部を採取して調べる)が行われます。心筋生検は、病態が許せばなるべく早期に行ったほうが、診断率が上がるといわれています。

治療の方法

 心筋炎急性期は症状が軽くても、原則として入院し、重篤な不整脈や循環動態の悪化がみられないかどうか、経過を観察する必要があります。頻脈性(ひんみゃくせい)不整脈に対しては、抗不整脈薬の投与や直流除細動(ちょくりゅうじょさいどう)を、完全房室ブロックなどの徐脈性(じょみゃくせい)不整脈に対しては、体外式ペースメーカーを挿入する場合があります。
 重症心不全(じゅうしょうしんふぜん)の場合では、病態に応じて利尿薬、血管拡張薬、強心薬などが用いられます。ショックに陥った場合は循環を補助する目的で、大動脈内バルーンパンピングや経皮的心肺補助法などを行うことがあります。副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の長期投与の効果は否定的な意見が多いようですが、病態によっては投与される場合があります。最近では、免疫グロブリン大量療法が行われる場合もあります。
 患者さんの約50%は後遺症を残さず完全に治り、約40%が何らかの心異常を残します。その程度は、心電図異常などの軽微なものが大部分ですが、なかには高度の心機能障害を残し、死亡する症例もあります。

心筋炎に気づいたらどうする

 感冒様症状や消化器症状に続いて、前述のような胸部症状を自覚する人は循環器専門医の診察を受け、心電図をとるのが診断の第一歩です。
 ウイルス感染にかからない努力が大切で、うがい・手洗いの励行と、インフルエンザウイルスが心筋炎の原因となることから予防接種も重要です。