治りが遅い理由

 青壮年に比べるとお年寄りはかぜや肺炎になりやすいだけでなく、治りが遅く、さらにこじれやすいのですが、なぜでしょうか? 3つの大きな理由があります。
 第1は肺そのものの問題です。お年寄りは肺活量に代表されるように肺の力が落ちているために、異物や痰を感知する力(反射)も排出する力も弱っています。また、結核(けっかく)などの肺の病気を経験していると気管支や肺の構造が変形していて感染しやすくなり、治りにくいのです。
 第2は全身的な抵抗力の低下です。加齢に伴って免疫の力や栄養状態が低下しますし、お年寄りになるほど多い各種の病気(糖尿病、肝臓、腎臓、心臓、その他の病気など)も、やはりかぜや肺炎を治す力を弱めます。
 第3は、治療薬剤の効き方の問題です。抗生剤を投与しても、確実に吸収されて確実に病巣に届かなければうまく効きません。お年寄りでは同じ量を内服しても若い人より吸収力が低く、そのためによく点滴注射をしますが、体内の水分や脂肪量が少ないために、今度は逆に必要以上に濃度が上がってしまったりと、調節が難しいのです。
 さて、役目が終わった抗生剤は、原型のままか、肝臓で形が一部変えられて(代謝という)から腎臓などを通って排泄されます。お年寄りはこれらのはたらきがいずれも低下しているために薬が体内に長時間残り、副作用が起きやすくなります。また、お年寄りではこれらのはたらきに個人差が大きく、治療はさらに難しいのです。

診断も難しい

 お年寄りでは診断が困難なことも問題です。かぜや肺炎になってもお年寄りの症状は若い人より一見軽く、見過ごされてしまいやすいのです。発熱も高熱ではなく、咳(せき)や痰もあまり出ないことがありますし、本人が体の変化に気がつかずに進んでしまうこともあります。
 検査をしても白血球やCRPの変化が若い人より少なくて目立ちませんし、肺や全身に慢性の病気があるために普段からいろいろな症状があり、それらに紛(まぎ)れてしまうことも多いのです。ですから、家族が異変に気づいた時には脱水症状(全身の水分比率が低下して内臓諸器官のはたらきが悪くなる状態)や意識レベルの低下が始まっていたり、肺炎敗血症(はいけつしょう)にまで進んでいたりすることがあります。
 家族や周囲の人が普段から注意してあげることが大切ですが、いちばん賢いのは、近所にかかりつけの医師を決めておいて、時々X線検査や血液検査をしてもらい、普段の状態を知っておくことです。