クラミジア・トラコマチス肺炎とはどんな病気か

 クラミジア・トラコマチスは日本や欧米をはじめ、世界的にも淋菌(りんきん)を上回り、最も頻度の高い性行為感染症の原因菌とされています。この菌は、ヒトを自然宿主としてヒトからヒトへ伝播(でんぱ)し、封入体結膜炎(ふうにゅうたいけつまくえん)やトラコーマなどの眼疾患、尿道炎子宮頸管炎(けいかんえん)子宮内膜炎、卵管炎、子宮付属器炎骨盤腹膜炎、肝周囲炎など、さまざまな病気を引き起こします。
 肺炎は、感染妊婦から出生した新生児・乳児の3〜20%が発症するとされていますが、成人では極めてまれです。

どのように感染するか



 クラミジア・トラコマチスの感染は性行為によるものであり、新生児・乳児への感染は、この菌の感染妊婦からの産道感染によって成立します(図14)。
 一方、感染した菌体の一部がさまざまなストレスによって持続感染型菌体に変化し、数カ月から数年、生体内で生存し続けることも明らかとなっています。この持続感染型菌体は、後述の抗クラミジア薬には不応性であるばかりでなく、多量の抗原や病原因子を含んでおり、慢性炎症を引き起こす原因のひとつであると考えられています。

症状の現れ方

 通常、3〜16週に鼻汁(びじゅう)や軽度の咳で発症し、多くの場合は無熱性で遷延性(せんえんせい)の経過をたどります。多呼吸を伴い、嘔吐やチアノーゼを伴う百日咳のようなけいれん性の咳が出現することもありますが、喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼー、ヒューヒューといった音がする呼吸)を伴うことは多くなく、一般に全身状態は良好です。

検査と診断

 検査成績では、時に高免疫グロブリン血症、Bリンパ球の比率の増加、および軽度の好酸球増多などが出現しますが、特徴的なものはありません。
 オウム病クラミジア・ニューモニエ肺炎と異なり、この病気の病原体の抗原や遺伝子を尿から検出できる検査キットや抗体検出用キットが数多く開発され、検体採取が容易なことから頻用されています。

治療の方法



 治療に際して重要なことは、抗菌薬が細胞内に十分に移行することです。ペニシリン系やセフェム系などのβ(ベータ)‐ラクタム系薬は細胞内移行が極めて低く、その標的とする細胞壁をクラミジアは有さないため、抗クラミジア活性をまったく示しません(表3)。同様にアミノグリコシド系薬も細胞内移行が低く、抗クラミジア活性を有しません。


 細胞内移行が良好かつ強いクラミジア増殖抑制を示す薬剤には、テトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、ニューキノロン系薬(レスピラトリー・キノロン)およびケトライド系薬などがあります(表3)。各種薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)は、クラミジア種間で差はみられず、現在までクラミジア・トラコマチスを除いて野生株の耐性化の報告はありません。
 適正な抗菌薬を使用した場合、臨床症状や胸部浸潤陰影の改善は速やかで、多くは投与開始後約1週間で治癒します。性行為感染症は、感染部位にかかわらずピンポン感染(うつしたり、うつされたりを繰り返すこと)が起こるため、パートナーの受診、治療が不可欠です。