呼吸不全<呼吸器の病気>の症状の現れ方

 呼吸不全を発症した場合の症状のひとつに呼吸困難(吸気時、呼気時の不快で困難な呼吸。呼吸運動が不快な努力を伴って意識されるもの)があります。しかし、呼吸困難はすべての呼吸不全の患者さんにみられるわけではなく、また呼吸困難を訴えている人すべてに呼吸不全があるわけでもありません。
 たとえば、呼吸困難感は精神的作用が大きく関係する場合があります。重大な事件が起きた場合や、咽喉頭違和感(いんこうとういわかん)がある場合は、体のなかの酸素量は正常でも呼吸がしにくいと感じることもあります。
 反対に呼吸不全が慢性にゆっくり起こると、体の酸素量は低くなっても、呼吸困難として感じないこともあります。標高の高い所に住んでいる場合と同じように、体が低い酸素に慣れてしまうことがあるのです。
 そのほか、高炭酸ガス血症、酸性血症の有無によっても症状が出ることがあります。

(1)急性呼吸不全
 呼吸困難を伴うことが多く、呼吸数の増加(頻(ひん)呼吸)、脈の回数が速くなる(頻脈(ひんみゃく))、努力呼吸、チアノーゼなどがみられます。重症度によって起座(きざ)呼吸(仰臥している時に呼吸困難がより強くなり、座った姿勢のほうが楽になる)を伴ったり、不穏状態(例えば酔っぱらいのように暴れる状態)から意識障害、昏睡(こんすい)までさまざまです。呼吸不全を起こしている原因疾患の症状も加わります。たとえば肺炎であれば黄色の膿性痰(のうせいたん)、発熱などが、敗血症であれば原因になった局所感染の症状がみられます。

(2)慢性呼吸不全
 慢性の場合には自覚症状が出にくいので、注意しなければなりません。身体所見は急性と同じく、頻呼吸、頻脈がみられ、肺動脈圧が上昇し、肺動脈や頸(けい)静脈の怒張(どちょう)(ふくれる)や、浮腫、チアノーゼなどがみられることがあります。さらに、やせ(時に著しいやせ)がみられ、呼吸の時に使う筋肉である胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)、斜角筋(しゃかくきん)が肥大して、鎖骨上の陥凹(かんおう)がみられたり、肩を使う呼吸、口をすぼめるような呼吸をしたりします。
 急性高炭酸ガス血症を伴う場合には、軽徴な人格の変化から、頭痛、明らかな錯乱(さくらん)、昏睡までさまざまな変化が生じます。重症の時には、生命を脅かす可能性が高くなります。

呼吸不全<呼吸器の病気>の診断と治療の方法

 急性呼吸不全と慢性呼吸不全とでは、治療の迅速性、内容が違います。詳細は原因になる疾患の項目を参照してください。多くの急性呼吸不全に対しては、状態に応じて酸素の投与や人工呼吸器の使用が低酸素血症を改善するために行われます。
 とくに、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪、心原性肺水腫(しんげんせいはいすいしゅ)などのさまざまな呼吸不全で、非侵襲的陽圧換気療法が行われるようになっています。非侵襲的陽圧換気療法とは、体に負担を与えずに陽圧換気をしようというものです。つまり、侵襲的である気管に挿管テューブを入れる気管内挿管をせずに、マスクを鼻また顔に装着し、陽圧を送って換気するものです。
 さらに、呼吸不全を起こしている原因疾患の治療や呼吸不全によって起こった病態を改善させる治療が行われます。
 慢性呼吸不全の大半を占める慢性閉塞性肺疾患の治療を例にすると、原因になる喫煙をやめるために、禁煙教育を行います。薬剤による治療は気管支拡張薬、吸入ステロイド薬、経口ステロイド薬などにより行います。程度にもよりますが、低酸素血症の患者さんに対しては、自宅で酸素の投与を行う在宅酸素療法を行います。ただ単に酸素の投与だけではなく、リハビリテーションを組み合わせることも重要といわれています。