日本脳炎と類縁脳炎とはどんな病気か

 コガタアカイエ蚊による日本脳炎ウイルスによって広められます。インド、タイなどのアジア地区での流行では小児に多発していますが、日本では、主として成人・高齢者にみられます。病理学的に日本脳炎の好発部位は大脳、視床(ししょう)、脳幹(のうかん)、脊髄(せきずい)などとされ、組織学的には細胞浸潤(しんじゅん)、グリア結節、軟化巣(なんかそう)などの特徴がみられます。
 一方、同じRNAフラビウイルスによるウエストナイル熱・脳炎は、元来中近東の風土病として知られていましたが、1999年ニューヨークに発生しアメリカ全土に拡大し、大きな脅威となりました。現在、日本へのウエストナイル熱の輸入感染は1〜2件の報告にとどまっています。このほか、ダニが媒介するロシア春夏脳炎、オーストラリア北部ではマレー渓谷脳炎、北米のセントルイス脳炎などがあります。

原因は何か

 RNA型の小型の球形ウイルスである日本脳炎ウイルスによります。日本の日本脳炎患者数は、1990年以降は年間ほぼ10人程度の発症とされています。一方、インド、タイなどアジア地区においては、現在なお年間に1000人を超える大流行がみられます。
 日本ではまれな病気になっていますが、日本脳炎ウイルスを広めるコガタアカイエ蚊の活動も確認されており、かつワクチン接種が減っている現状を考慮すると、再び増加に転じる可能性もあります。

症状の現れ方

 日本脳炎の前駆症状としては違和感、全身倦怠感(けんたいかん)がみられ、急性期の神経学的所見は、発熱、意識障害、頭痛・項部(こうぶ)(うなじ)硬直などの髄膜刺激症状のため隠蔽されがちですが、固縮、振戦(しんせん)、不随意(ふずいい)運動などの錐体外路徴候(すいたいがいろちょうこう)がみられます。一方、錐体路症状の片麻痺(かたまひ)、四肢(しし)麻痺などの運動麻痺も特徴的な症状とされています。
 インドなどアジア地区の流行例では、脳症、脊髄炎ギラン・バレー症候群などが報告されています。

検査と診断



 血液検査では赤沈亢進、C反応性蛋白上昇などの炎症所見がみられます。髄液では初期から細胞数増加、蛋白増加、糖は正常から軽度増加が認められます。CT、MRI像での視床、基底核・脳幹病変は特徴的とされています(図19‐b)。脳波では急性期高振幅徐波(こうしんぷくじょは)(振幅の大きな、緩やかな脳波)を示します。
 発症時期(7〜9月初旬)、臨床症状、日本脳炎ウイルスに対するペア血清で補体(ほたい)結合抗体、赤血球凝集抑制価の4倍以上の上昇などを参考にして診断します。血清・髄液からの酵素抗体法によるIgM抗体の検出、さらにはPCR法による日本脳炎ウイルスゲノム(遺伝子)が検出されれば確定的とされています。

治療の方法

 意識障害などが重い急性期の治療が大切です。けいれん、呼吸管理などに迅速に対応する必要があります。死亡率は約30%で、後遺症には認知症、パーキンソン症状、四肢麻痺などが残ります。現在のところ、特異的な抗ウイルス薬はなく、全身管理や脳浮腫(のうふしゅ)対策が主体ですが、副腎皮質ステロイド薬の有効性は確認されていません。
 ワクチンは予防に有効なので、流行地域に行く時には接種を行うことがすすめられます。

日本脳炎と類縁脳炎に気づいたらどうする

 日本での日本脳炎の発症は、7〜9月初めにかけてです。診断には、発熱、意識障害、大脳巣症状(片麻痺やパーキンソン症状)などの起こり方を聞くことが大切です。意識障害がある患者さんからは聞き取りにくいので、家族や同居人から状態を聞く必要があります。