認知症でいちばん目につくのは「物忘れ」です。とくに認知症の初期には、最近の出来事が思い出せなくなります。食事をしたばかりなのに、また食事を催促することがあります。
 そして認知症が進行すると、昔の出来事、言葉や諺(ことわざ)の意味がわからなくなり、その状況に適した行為、場所や人の識別ができないなどの高次脳機能障害(コラム)が現れます。
 認知症を診断するのは容易ではありません。新しいことが覚えにくいなどの記憶障害は、高齢者のほぼ全員にみられるものです。ただし、年相応を越えた顕著な記憶障害は問題です。そのなかには記憶障害だけしか異常のない軽度認知障害があります。その一部(1年で8人に1人の割合)が認知症に進行するといわれています。


 過度の飲酒、薬物によるものや一時的な健忘症は、飲酒や薬を中止するとか、時がくれば元にもどります。急に起こる記憶障害や軽い意識障害が頭の打撲や全身疾患によって起こることがあります。うつ病や妄想性障害など、脳の形の正常な機能性脳障害も認知症ではありません(図20)。
 認知症は器質性疾患と呼び、脳が形のうえで異常になります。それ以外に、甲状腺ホルモンやビタミン欠乏など全身の病気でも認知機能は低下し、広い意味で認知症に加えます。


 表3に示すように、認知症を起こす病気には多くのものがありますので、どの病気によって認知症が起きたのかを診断するのはとても重要なことです。なぜなら原因となった病気によって治療法が異なり、なかには治りやすい病気もあるからです。医師は臨床検査などにより病気を診断して、治療の手がかりにします。
 さらに、病名だけでなく、認知症の程度(軽度・中等度・高度)や患者さんが示す異常の特徴についても検討します。それらを明らかにすることが治療や介護を行ううえで大切です。