レビー小体型認知症
 横浜ほうゆう病院の小阪憲司医師が40年前、見つけた病気です。(1)症状の変動、(2)パーキンソン病様の運動障害、(3)ありもしないものが見える(幻視)、(4)立ちくらみなどの自律神経症状、(5)睡眠障害を特徴とします。
 すべての特徴がそろうわけではありませんが、心臓のシンチグラフィーで診断がつきます。
 塩酸ドネペジルがよく効きますので、図21に従って治療してください。パーキンソン病のような運動症状が強ければL‐ドーパなどの抗パーキンソン病薬を使います。
前頭側頭型認知症(前頭側頭葉変性症)
 脳の前方(前頭葉)や両端・耳の内側(側頭葉)が萎縮する病気がいろいろあります。
 ピック病はその代表的なもので、主に65歳以前に発病し、徐々に進行します。物忘れよりも、社会的な人間関係を維持する能力が早期から低下します。自分の行動が制御できず、感情が鈍化するため介護が困難です。抗うつ薬(フルボキサミン)が効くこともあります。
 進行性核上麻痺は、考える速さがゆっくりとなり、人格や気分が変調し、今までできた作業能力が低下します。認知症に加えて、眼の動きや歩行が難しくなるため、転倒が頻繁に起こります。
 特徴的な脳の画像により診断できます。有効な治療薬はありませんが、リハビリテーションや装具に有用なものがあります。
 大脳皮質基底核変性症は、仕事をやり遂げる能力や視覚による空間の認識がうまくできない、まとまりのある動作ができない、筋肉が硬くなるという障害が左右どちらか一方に現れます。言葉が流暢(りゅうちょう)でなく、記憶の低下もみられます。
 エビデンス(検証された効果)のある薬物療法がないので、非薬物療法が中心です。
正常圧水頭症など外科治療の可能な認知症
 認知症、歩行障害、尿失禁がみられ、脳画像で側脳室が大きく、脳の上の方が詰まっている人は正常圧水頭症を疑います。その人の脳脊髄液を20mlほど抜いて、歩行、知能、尿失禁が良くなれば、脳や脊髄と腹腔の間にチューブを挿入するシャント術が行われます。
 頭にけがをしたあと、画像検査をすると、脳と頭蓋骨の間に血液がたまっていることがあります(慢性硬膜下血腫)。認知機能が低下しますが、頭蓋骨に孔(あな)を開けて、たまった血液を洗い流す方法で症状が軽快するものです。
 良性の脳腫瘍があると認知機能は低下しますが、腫瘍を取り除くことによって、認知機能が回復することもあります。脳外科の先生とよく相談するようにしてください。
神経感染症
 脳にウイルスや細菌などが感染すると、神経が破壊されて認知症となります。感染症で破壊されてしまってからでは回復は困難なので、感染早期の治療が必要です。対象となる病気は単純ヘルペス脳炎エイズ脳症、細菌性脳炎、結核性脳炎、梅毒性脳炎などです。
低(無)酸素脳症
 脳に酸素が十分運ばれないと、脳のエネルギーが減って、組織が破壊されます。早急に見つけだして、酸素を十分に与える(高圧酸素療法)ことによって改善することがあります。
内分泌疾患
 ホルモン、とくに甲状腺の異常によって認知症となることがあります。その場合はホルモンを正常にすると、認知症が改善するので、早期に診断を受けて治療してください。
中毒性・欠乏性認知症
 アルコール中毒、薬物中毒、ビタミン欠乏症、電解質異常などによっても認知症が起こります。その異常を早急に発見して、中毒をやめさせたり、欠乏している物質を補充することが大切です。
 以上のように認知症の原因は多いのですが、治療の容易な病気から診断を試み、治療に進むのがよいと思われます。また、有効な薬がない場合でも、非薬物療法(ケア、リハビリテーション等)などによる対応が大切です。