小脳の病気とはどんな病気か



 小脳は大脳の下方、橋(きょう)、延髄(えんずい)といった脳幹(のうかん)の後方に位置する中枢神経で(図22)、大脳や延髄などより名前になじみはありませんが、小脳が侵された場合の症状については、飲酒後の酩酊(めいてい)を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
 お酒を飲んで少々酔っ払った時には、ろれつの回らないしゃべり方になり、千鳥足といわれるように歩く時にふらついてしまいます。また、物を取ろうとして手を伸ばしても、距離がうまく測れずに取れなかったりします。
 ひどく酩酊すると、妙に明るくなったり、悲しくなったり、あるいは度を超すと意識を失ったりしますが、これらは大脳の機能障害といえます。大脳の機能もアルコールで麻痺しやすく、小脳の次に症状が現れます。

原因は何か

 小脳が侵される病気としては、脳のほかの部位と同様、腫瘍(しゅよう)、脳血管障害、変性疾患、炎症性疾患があります。
 小脳の腫瘍は小児に多く、脳血管障害は若年者にもみられますが脳動脈硬化に伴って起こることが多いので、高齢者に多く発症します。変性疾患はとくにこれといった誘因(ゆういん)がなく細胞が変性して死滅する病気で、中高年に発症するものが多いようです。
 このほか前述したように、アルコールでは急性中毒症状としても小脳症状を来しますが、長期間の大量飲酒による慢性中毒症状でも症状が現れます。慢性になると、急性中毒と違ってアルコールを断っても小脳の萎縮(いしゅく)のために症状がなくなりません。
 ある種の抗けいれん薬の過量服用や、トルエンのような脂肪に溶け込みやすい毒物による中毒でも、小脳症状が現れることがあります。

症状の現れ方

 小脳が侵されるとふらふらしますが、ほかの理由でふらついていないか確かめることも重要です。脊髄(せきずい)の後索(こうさく)という部分が侵されると立った時にふらつきますが、このふらつきは眼を閉じた時に強くなり、眼を開いていてもふらつきの強い小脳症状とは区別がつきます。
 この場合、日常生活では、顔を洗う時に視界が遮(さえぎ)られると突然転んだり、暗闇でふらつきが強くて歩きにくかったりします。内耳や聴神経(ちょうしんけい)の異常でもふらつきますが、この場合にはグルグル回るようなめまい耳鳴り、聴力障害が伴うことで区別がつきます。
 小脳の機能が侵されている人の日常生活での特徴は、体を安定させるために脚を開いて立ちます。眼を開けて周囲を見ることはできますが、眼を閉じてもふらつきの程度は変わらず、歩く時にもふらつきます。ろれつが回らず、ゆっくりしゃべったり、あるところでは速くなったりといったリズムに欠ける話し方になります。
 何かを取ろうとしても手が思うところに行かず、揺れてしまってうまくいきません。不器用になった感じがあるかもしれません。お酒を飲んでいないのに、酔っぱらっているのではと疑われるようなこともあります。このような症状があったら、小脳に何か病変があると考えます。