ミトコンドリア脳筋症とはどんな病気か

 筋肉のエネルギー源は、筋細胞内に蓄積されたグリコーゲンと中性脂肪です。脂肪は細胞内のミトコンドリアのなかで代謝されて、アデノシン三リン酸(ATP)を作り出す源となります。とくに、マラソンのような持続的な運動に使用されるエネルギー源が脂肪です。
 したがって、ミトコンドリアが異常になるとエネルギー代謝がうまくいかず、運動異常が現れることになります。ミトコンドリアは全身の細胞にあるので、筋肉だけではなくほかの場所の機能異常も現れます。脳神経と筋細胞のミトコンドリア異常が主にみられる病気がミトコンドリア脳筋症です。
 さまざまな病気が報告されていますが、主な病型は次項で述べる3つです。ミトコンドリアのDNA異常で発症する病気は、母系遺伝(体細胞遺伝)で子孫に伝えられます。脳筋症では、ミトコンドリアのDNA異常があることが明らかになりました。
 いずれの病型にも決定的な治療法はありません。

主なミトコンドリア脳筋症


(1)カーンズ・セイヤー症候群(慢性進行性外眼筋麻痺(まんせいしんこうせいがいがんきんまひ):KSS)

 この病気は眼球運動麻痺、心伝導障害に網膜(もうまく)色素変性症を伴った病気です。3つの症状が常にそろうわけではありません。ミトコンドリアDNAの一部が欠けています。
(2)脳卒中様(のうそっちゅうよう)発作を伴うミトコンドリア脳筋症(メラス:MELAS)
 脳卒中のような症状と高乳酸血症を示し、若年で発症します。低身長で筋力低下がみられます。ミトコンドリアDNA内のロイシンtRNAの点変異(DNAの1塩基の欠失、置換、挿入のこと)が、日本の研究者によって明らかにされました。また最近、日本でL-アルギニン療法が提唱されて注目されています。
(3)ミオクローヌスを伴うミトコンドリア脳筋症(福原病(ふくはらびょう):MERRF)
 このタイプは小脳症状、ミオクローヌス(不随意(ふずいい)運動の一種)、筋症状、てんかんが主な症状です。この病気もミトコンドリアDNAのリジンtRNA内の点変異で起こります。