聴神経腫瘍とはどんな病気か

 聴神経のうち、前庭(ぜんてい)神経と呼ばれる神経を包んでいる鞘(さや)から発生する良性の脳腫瘍です。耳の奥に発生し、音を伝える神経が頭蓋骨の孔(あな)のなかを走り、脳のほうへ出る直前の場所で神経の鞘がふくらみ、やがて腫瘍になります。近くには顔面の表情を作る筋肉を動かす顔面神経や、音を直接脳に伝える蝸牛(かぎゅう)神経、脳の中心で多くの機能が集中する脳幹(のうかん)と呼ばれる場所があります。

症状の現れ方

 数年の経過で片方の聴力が低下したり、耳鳴りが現れます。腫瘍が非常に大きくなるとまわりの神経を圧迫して、めまい、ふらつき、吐き気、まれに顔面神経麻痺などが現れます。また、まれに髄液(ずいえき)の流れが損われて、脳のなかに水がたまる水頭症(すいとうしょう)という病気になることもあります。

検査と診断



 MRI検査で腫瘍を診断します(図38)。腫瘍はほとんどの場合、骨のなかに一部が埋もれているので、CT検査で細かい断層撮影を行って骨の情報を収集します。

治療の方法

 良性の脳腫瘍ですから、手術による切除が基本です。手術が行えない場合や手術をしても腫瘍が残った場合には、放射線を腫瘍のところに集中してあてるガンマナイフと呼ばれる治療が行われます。手術顕微鏡を使いながら、慎重にまわりの神経から腫瘍をはがし、さらに骨のなかに埋もれている腫瘍はドリルで骨を削(けず)りながら切除します。
 手術のポイントは、腫瘍にくっついて走る顔面神経の保存です。腫瘍が小さい場合には近くにある顔面神経の機能を残すことが可能で、また蝸牛神経の機能を手術中に脳波で記録しながら腫瘍を切除すると、術後も聴力を保つことが可能な場合もあります。
 逆に腫瘍が大きいと、手術により顔面神経麻痺が現れる可能性が大きくなりますが、顔面神経麻痺は明らかに神経を残せた場合には、手術後しばらくすると回復することがあります。