栄養素には蛋白質、脂肪、炭水化物、無機質(塩分や鉄分など)、ビタミンがあります。このうちビタミンは体内では合成されないので、微量の摂取で十分ですが毎日とる必要があります。不足すると正常な生理機能、物質の代謝、成長、生命維持に障害を来すので、欠くことができません。

ビタミン欠乏による神経障害とはどんな病気か

 ビタミンには水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B6、B12、ニコチン酸、葉酸(ようさん)、パントテン酸、ビタミンC)と、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)とがあります。
 脂溶性ビタミンは熱に対して比較的安定で、必要以上にとると肝臓に貯蔵されるので、過剰投与すると障害を引き起こします。たとえばビタミンAが不足すると、夜盲症(やもうしょう)や成長の遅れが起こりますが、過剰にビタミンAをとると頭痛、感情が過敏になったり、頭蓋内圧が高くなります。小児では頭痛、嘔吐などの症状も出るので、脳腫瘍(のうしゅよう)との見分けが必要になることがあります。脂溶性ビタミンは、とりすぎないことが大切です。
 水溶性ビタミンは熱に弱く、調理法に気をつける必要がありますが、過剰にとっても尿に排泄されるので毒性はありません。

原因は何か

 神経症状を来すビタミンB1、B6、B12、ニコチン酸の欠乏は、偏食が原因です。また、天候不順で農作物のできが悪かったり、戦争などで食料事情が悪くなった地域では、栄養不足により起こります。アルコール多飲のために、必要なビタミンB1がアルコールの代謝に使われてしまって、体内で不足することもあります。
 B12の欠乏は、胃切除などの術後にB12の吸収ができないために起こることもあります。

症状の現れ方

 神経症状を来すビタミン欠乏症には、以下のようなものがあります。 (1)B1の欠乏では、手足の先にしびれや脱力を来す末梢神経障害、脳の障害ではウェルニッケ脳症がみられます。ウェルニッケ脳症はアルコール多飲の人で起こることが多いのですが、無欲状態になり、眼の動きも悪くなって、両下肢のバランスを欠くふらつき歩行がみられます。 (2)B6の欠乏では、けいれんや認知障害がみられます。 (3)B12の欠乏では、貧血のほかに末梢神経障害や脊髄(せきずい)障害、認知障害がみられます。 (4)ニコチン酸の欠乏では、意識障害、認知障害、固縮などがみられます。


 ビタミンの種類によって欠乏の時の症状が異なりますので、表9にまとめておきます。

検査と診断

 最近ではビタミンの血中レベルが計測できるので、低値を示せば欠乏症と診断できます。そのほか、末梢血の検査によってビタミン欠乏による貧血や、アルコールによる肝障害がないかどうかや、末梢神経伝導検査によって手足の神経の機能がわかります。
 このようにして、総合的にどのビタミンが不足しているのか、また末梢神経の機能低下がないかどうかの結果を踏まえて診断されます。脊髄や脳の障害はMRI検査で病変部位を画像で示すことができ、診断に役立っています。

治療の方法



 成人が1日に必要とするビタミンの量を表10に示します。ビタミン欠乏症は、補充療法によって比較的容易に治療することができます。
 なお胃切除をしている患者さんでは、経口的にビタミンを補充しても胃からの吸収が悪いことがあるので、注射でビタミンB1やB12を与えるほうがよい場合があります。

ビタミン欠乏による神経障害に気づいたらどうする



 ビタミンには多くの種類があり、表9に示した欠乏症の症状があれば、早期に治療して治る時期を逃さないようにすることが大切です。神経症状がある時には神経内科医の診察を受け、ウェルニッケ脳症(救急として治療する)や脊髄障害がある時などは、注射で十分な量のビタミンを補給して、早期治療によって神経系の後遺症を残さないことが大切です。