大腿骨頸部・近位部骨折とはどんな外傷か

 大腿骨頸部骨折とは、股関節(足の付け根の部分)の中で大腿骨の骨頭を支える頸(くび)の部分の骨折です。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が基盤にある高齢者では頻度が高い骨折のひとつで、高齢化社会を迎えて増加してきています。
 多くは転倒して臀部(でんぶ)を打撲して骨折しますが、骨粗鬆症のひどい人はケガがなくても徐々に骨折することがあります(大腿骨頸部脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折)。一方、若い人では交通事故や高所からの転落などの強い外力によって起こります。


 大腿骨頸部骨折には、骨頭に近いところで折れる内側骨折(股関節内での骨折)と、遠いところでの外側骨折(股関節外での骨折)に分けられます(図18)。内側骨折と外側骨折では、治療法や合併症などが異なります。
 また、大腿骨近位部の骨折とは、頸部の部分から下方にかけての骨折のことです。

症状の現れ方

 高齢者が転倒して立ち上がれなくなった時には、まず、この骨折が考えられます。骨折した足は短くなり、外側に開いたような形をとります。自分で足を動かすことはできず、他人が動かすと強く痛がります。外側骨折では関節外の骨折であることより、臀部の外側中心に、出血やはれが徐々に出現してきます。
 しかし、時には骨折が軽度で、骨折した部分がお互いに噛み合って安定した形となり、歩行ができる人もいます。

検査と診断

 股関節の2方向のX線写真をとると、骨折の形と部位が明らかになります。しかし脆弱性骨折では、X線では最初のころはわからないことが多く、症状から骨折が疑われる時にはMRI検査が必要となります。

治療の方法

 この骨折に保存的治療(手術以外の治療)を行うと、長時間の臥床を強いることになり、高齢者ではいろいろな合併症を引き起こします。そのため、原則として手術を行い、早くから歩くリハビリ訓練を指導します。しかし、全身状態が悪く手術が無理な時や脆弱性骨折などでは、体重をかけずに安静にして治療することもあります。


 手術の方法として、内側骨折ではずれがわずかであれば、元に戻してネジ数本で固定します(図19)。しかし、ずれがひどい時には骨折した部分を取り除き、金属製の人工の骨頭に入れ替えます(図20)。


 外側骨折では、ずれをもどしてプレートとネジや骨髄内に太い釘を入れてネジで補強する方法で骨接合を行います(図21)。

合併症はどんなものか

 内側骨折は、外側骨折に比べて骨折の部分の癒合が悪いため、骨癒合が失敗することがあります。さらに、内側骨折では骨頭に栄養を送る血管が骨折の際に損傷されて、受傷後1〜2年の間に骨頭がつぶれてくることがあります(大腿骨骨頭壊死(こっとうえし))。いずれの場合も人工骨頭置換術で治療します。
 また、動けずに臥床していることによる合併症として、ふくらはぎの静脈に血のかたまりができ、それが大きくなり肺の動脈に流れていって詰まったり(静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう):最悪の場合には生命の危険性があります)、床ずれ認知症(にんちしょう)の悪化などがみられることがあります。

応急処置はどうするか

 高齢者が倒れて、臀部を痛がり立ち上がれない時には、この骨折が考えられるので、すぐに整形外科を受診するようにしてください。