手指屈筋腱損傷とはどんな外傷か

 屈筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力は骨に伝達されないので、手指を曲げることができなくなります。切創(せっそう)や挫創(ざそう)による開放性損傷(かいほうせいそんしょう)と、創(傷)がなくて生じる閉鎖性損傷(へいさせいそんしょう)(皮下断裂(ひかだんれつ))がありますが、前者が多く生じます。

見落としやすい外傷と合併症

 屈筋腱の損傷と同時に神経の断裂を伴うことが珍しくありません。その場合、同時に神経の修復が必要となります。

症状の現れ方

 手指の屈筋腱は、母指は1本ですが、他の指には、深指屈筋腱(しんしくっきんけん)と浅指屈筋腱(せんしくっきんけん)の2本があります。両方(母指では1本)が切れると、手指が伸展位(伸びた状態)となり、まったく曲げることができなくなります。
 深指屈筋腱のみが切れて、浅指屈筋腱が残っている場合は、DIP関節だけが伸びた状態となり、曲げることができなくなりますが、PIP関節を曲げることは可能です。

検査と診断

 創の存在、受傷歴の有無、手指関節の屈曲が可能かどうかなどで診断は容易です。

治療の方法

 屈筋腱損傷の治療は、手の外傷の治療のなかで最も難しいもののひとつで、手術(腱縫合術)が必要です。治療成績には、年齢、受傷様式、受傷から手術までの期間、手術操作、手術後の後療法(こうりょうほう)(リハビリテーション)などが影響します。
 治療が難しい理由は、次の2つの問題があるからです。ひとつは、再断裂の問題です。腱の断端同士が癒合する前に、強い力がかかれば、縫合した糸が切れて腱の断端は再び離れてしまいます。
 もうひとつは、癒着の問題です。周囲組織と腱がくっついてしまうと、腱は治っても、手指を曲げられない、あるいは屈曲が不十分という状態が生じます。このため、手術には正確でていねいな操作が求められますし、手術後の後療法が非常に重要です。

外傷を負ったら

 腱の断裂に、創の大きさは関係ありません。また、早期の治療が必要なので、創が治ってから判断しようと考えて待機することは間違いです。経験のある整形外科医がいる手術可能な病院をすぐに受診することをすすめます。