膝靭帯損傷とはどんな病気か



 膝には、関節の内側、外側、中心に、それぞれ内側側副(ないそくそくふく)靭帯、外側側副(がいそくそくふく)靭帯と2本の十字(じゅうじ)靭帯(前(ぜん)十字靭帯と後(こう)十字靭帯がクロスして存在する)の合計4本の靭帯があって、関節が不安定にならないように制動作用を果たしています(図38)。これらの靭帯に大きな外力が作用すると、部分的にまたは完全に切れてしまうことがあり、これを膝靭帯損傷といいます。
 膝靭帯損傷は通常単独で起こりますが、複数の靭帯が同時に切れる複合損傷となる場合もあります。靭帯別にみると、損傷頻度は内側側副靭帯と前十字靭帯が高く、後十字靭帯は時にみられ、外側側副靭帯が切れることは非常にまれです。
 内側側副靭帯は主に外反動揺性(外側に反る不安定性)を防止している靭帯で、外反や外旋(外側に反ったり回転する力)を強制されると切れてしまいます。不安定性の程度によって、1度(疼痛のみで不安定性はない)、2度(膝を伸ばした状態、伸展位で不安定性はないが、30度ほど屈曲すると認められる)、3度(伸展位で不安定性を認める)に分類されています。単独の損傷のことが多いのですが、3度の不安定性がある場合は前十字靭帯損傷を合併している可能性があります。
 前十字靭帯は下腿の前方移動、前内方への回旋を防止している靭帯で、下腿が前方へ引っ張られたり、内旋されたりする力や強い外反力で切れてしまいます。男性より筋力が弱く、関節の弛緩(しかん)性の強い女性に好発します。発生しやすいスポーツ種目は、バスケットボール、サッカー、ラグビー、スキー、バレーボール、などで、男性ではコンタクト(接触)プレーでの発生が目立ちますが、女性では非コンタクトでも起こります。
 後十字靭帯は膝の屈曲位での下腿の後方への安定性に重要なはたらきをもつ靭帯で、膝の屈曲位で下腿に前方から後方への強い外力がかかった時に切れてしまいます。内側側副靭帯と前十字靭帯の損傷に比べて症状が重くないので、気づかれないことも少なくありません。

合併症

 発症後間もない新鮮例でも、靭帯損傷に半月板(はんげつばん)損傷や骨軟骨(こつなんこつ)損傷を合併することがありますが、膝が不安定なまま放置して(陳旧例(ちんきゅうれい))スポーツを続けると、膝に水がたまったり(関節水腫)、二次的に半月板が切れたり、変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)に移行したりします。

症状の現れ方

 内側側副靭帯損傷では膝の内側の疼痛、可動域の制限、不安定性が認められます。前十字靭帯損傷の新鮮例では切れた瞬間「バシッ」という音を聞くことがあり、関節に血がたまり、激痛を感じます。陳旧例では前十字靭帯不全の症状として膝くずれや関節水腫(かんせつすいしゅ)のほか、二次的に半月板が切れると半月板損傷の症状が認められます。
 後十字靭帯損傷では受傷直後に脛骨粗面(けいこつそめん)(膝蓋骨の約3cm下の骨の出っぱり)の皮膚に打撲(だぼく)のあとや挫創(ざそう)が認められることや、屈曲位での後方不安定性が残ることもありますが、スポーツ活動に支障を来さない場合も少なくありません。

検査と診断

 診断は不安定性を触診したり、X線ストレス撮影やMRIを行います。十字靭帯については関節鏡検査(内視鏡)が最も信頼できます。徒手テストは外反動揺性テストで内側側副靭帯、前方引き出しテストで前十字靭帯、後方引き出しテストで後十字靭帯、内反動揺性テストで外側側副靭帯をそれぞれ調べます。重要なことのひとつは、治療方針を決めるために、単独の靭帯損傷か複合靭帯損傷かを正確に知ることです。

治療の方法

 内側側副靭帯損傷については、新鮮例で単独の損傷であれば、ギプスや内側側副靭帯用サポーターの装着でほとんどの場合治ります。しかし、新鮮例で十字靭帯損傷を合併している場合や陳旧例では、靭帯縫合術や靭帯再建術の手術が必要なこともあります。
 前十字靭帯損傷については、アスリートや重労働者など以外では、筋力トレーニングやサポーター装着などの保存療法で経過をみます。スポーツを積極的に行う人では、陳旧例はもちろん新鮮例でも靭帯再建術の手術を行います。
 後十字靭帯損傷はスポーツ活動に支障を来さない場合が多く、急性期に局所を固定したあと、サポーター装着、テーピング、大腿四頭筋の筋力トレーニングなどの保存療法を第一選択とします。しかし、不安定性が強いなど、症状によっては靭帯再建術を行います。
 また、脛骨(けいこつ)側の付着部での裂離骨折の場合は、急性期に骨接合術が選択されることがあります。

応急処置や予防対策はどうするか

 応急処置として、膝の打撲(だぼく)や捻挫(ねんざ)は関節内の出血を伴うことがあるのを念頭に置いて、ただちにRICE療法を行います。RICE療法で疼痛が軽くなっても、膝のはれや膝に力が入らない、不安定感があるなどの症状が残れば靭帯損傷の可能性があるので、必ず整形外科を受診します。
 また、前十字靭帯損傷の予防訓練として関節固有感覚を高める機能訓練が提唱され、その有効性が報告されています。