神経鞘腫とはどんな病気か

 神経のそばに発生する良性腫瘍で、比較的みる機会の多い疾患です。
 1本の電話線のケーブルが多くの細い電線の束からできているように、1本の神経は多くの神経細胞の線維が束になって成り立っています。神経鞘腫は、このうちひとつの神経細胞から発生するので、残りの神経細胞は正常なままです。ただし、ひとつの神経にたくさんの神経鞘腫が数珠のように発生することもあり、注意が必要です。
 発生する年齢は20〜70代まで幅広く、平均年齢は40代後半といわれています。

症状の現れ方

 体の表面に近い部分では、瘤(こぶ)として意識されます。
 この腫瘍は良性腫瘍なので、大部分の症例では瘤が成長する速さは比較的ゆっくりで、何年間も大きさが変わりませんが、比較的早く成長する例外的なケースもあります。
 神経のそばに発生しているので、痛みを伴うことがあります。瘤を押したときのみに痛みが出る(圧痛)、瘤を押すと発生した神経の走行に沿って電気が走るような痛みが出る(Tinel's sign〈チネル徴候〉)などの痛みの出方があります。
 体の深い部分に発生した場合は、原因不明の痛みやしびれを症状とすることが多いようです。
 最近はMRI検査(磁力を利用した画像検査)が発達し、ほかの病気の検査のために行ったMRI検査で、たまたまこの病気が見つかる機会も増えてきています。
 症状が進行すると、感覚障害(触られたときの感覚が鈍い)や運動障害(力が入りにくい)などの原因となります。
 脳神経に発生した場合、脳神経の障害(耳の聞こえが悪い、めまいがするなど)が発生します。

検査と診断

 X線検査で、直接腫瘍が写ることはありません。しかし、骨のそばに発生し、骨に食い込んで成長した場合、骨の欠損が写ることがあります。


 MRI検査で正確な発生部位を確認します。約半数の症例では、腫瘍の中心部とまわりの部分で色が違って描出されるため、矢の的(まと)のような形をとり(図52‐(a))、診断的な価値が高いといわれています。


 また、MRI検査で走行が確認できる太い神経に発生している場合、神経と瘤が隣にあることが画像で確認できれば、瘤が神経から発生している可能性が予想され、この病気であることを疑う重要な根拠になります(図52‐(b))。
 神経の症状(感覚障害や運動障害)があれば、神経を伝わる電気信号が正確に伝わっているかを調べる筋電図という検査を行って、障害の程度を確認する場合があります。正確な病名を確定するには、実際に組織を顕微鏡で見て判断する必要があります。
 区別する必要がある病気として、同じく神経に発生する良性腫瘍の神経線維腫(しんけいせんいしゅ)や、神経に発生する悪性腫瘍の悪性末梢神経鞘腫瘍(あくせいまっしょうしんけいしょうしゅよう)などがあります。
 手や足などのしびれなどの神経症状が中心的な症状であれば、腫瘍以外の神経を障害する病気、たとえば椎間板(ついかんばん)ヘルニアなどが原因になっていることがあり、やはり区別が必要です。

治療の方法

 比較的小さく、痛みなどの症状がない場合は、経過観察のみでよいことが多いです。我慢できない痛みがある場合などは、手術をするとよくなることが少なくありません。


 手術は、腫瘍のできていない神経線維を傷つけないように、束になった正常な神経線維を腫瘍からはがしてから、腫瘍のできている1本のすじと腫瘍を切り取ります。図53は、実際の手術で正常な神経をすべて腫瘍からはがしたあと、腫瘍が発生している神経を切断する直前の写真です。
 手術操作で神経を直接傷つけることがなくても、手術のあとでしびれや運動障害が起こることがあるのは、こうして正常な神経をはがす操作が必要であるからです。多くは一時的で経過を見ているうちに回復してきます。
 正常の神経と腫瘍を手術中に見分けるために、手術用の顕微鏡を使用したり、微弱な電気刺激を組織に加えることで神経の場所を確認するなど、安全な手術を行うためにいろいろな工夫がなされます。
 完全に切除された場合、再発はほとんどありません。

神経鞘腫に気づいたらどうする

 痛みやしびれを伴う瘤を自覚した時などは、整形外科医に相談してみてください。手術は骨軟部腫瘍を専門とする医師や、繊細な手術を得意とする手の外科の専門医が行うことが多いようです。

関連項目

 悪性末梢神経鞘腫瘍神経線維腫