悪性線維性組織球腫とはどんな病気か

 肉腫のなかでは頻度の高い腫瘍です。多くは50代以上の人に発生します。
 悪性度の高い肉腫で、急速に大きくなるとともに、体のほかの部分に転移することも多く、現在でも治療が難しい病気のひとつといえます。
 かつて肉腫を顕微鏡で診断する際、たとえば脂肪細胞が悪性化して肉腫となったように見えれば脂肪肉腫と呼ぶなど、よく似た正常組織にちなんだ診断名をつけていました。
 悪性線維性組織球腫という病気も、かつては組織球などの正常組織が悪性化したものと考えられていましたが、現在この学説は否定されており、病名だけが慣習に従って残っています。
 分子生物学などの学問の進歩の結果、この病気に関して新しい概念に基づいた診断名、診断基準や分類法が提唱されていますが、いまだそれらの評価は定まっておらず、研究途上であります。
 なお本稿では、軟部組織に発生するケースを扱いますが、骨にも同じ病名の病気が発生し、顕微鏡でみると、共通した所見を示します。骨にできた場合も悪性度が高く、治療が難しい病気です。

原因は何か

 はっきりした原因はわかっていません。

症状の現れ方



 痛みのない瘤として意識されることが多いようです(図57‐(a))。非常に巨大なもの以外、痛みや運動障害などの原因となることはまれです。
 よくできる場所は、手足、とくに大腿部(ふともものあたり)ですが、腹部臓器のまわり(後腹膜腔(こうふくまくくう))や骨盤のまわりなど体幹部にも発生します。多くは筋肉のなか、あるいは筋肉と筋肉の間(筋間)など体の深いところに発生しますが、皮下組織(皮膚と筋肉の間)といわれる体の表面に近い場所にも発生します。
 約5%の患者さんは、病気が見つかった時点で、すでにほかの部分に転移巣があります。転移が発生する臓器は肺が多いとされています。

検査と診断



 MRI(図57‐(b))などの画像検査で病気の広がりを正確に評価する必要があります。ほかの臓器に転移している可能性が高いため、肺などの転移しやすい臓器の画像検査も同時に行います。
 多くの軟部腫瘍にいえることですが、外来での腫瘍の観察や画像検査だけで診断がつくことはありません。最終的には、顕微鏡で実際に腫瘍組織を観察することで確定診断をつけます。
 小さな切開を組織に加えるなどして、実際に体内から組織を採取して検査します。こうした処置を生検といい、骨軟部腫瘍の診断において大変重要な検査法です。顕微鏡所見によって、手術法や抗がん薬の適応法が大きく異なるからです。

治療の方法



 体内に腫瘍を残さない手術(広範切除)が必要です。非常に急速に増殖するため、大規模な手術となることも少なくありません。図57‐(c)に示すように、まわりの組織で腫瘍を包み込むようにひとかたまりにして取り出すします。この手術法を広範切除術と呼びます。こうした手術の理論と手技が確立されたことで、悪性軟部腫瘍の再発率を著しく下げることができるようになりました。
 病気が見つかった時には、悪性の細胞が体中に広がっている可能性を考えて、全身に抗がん薬を投与する機会が増えています。しかし、患者さんが高齢であるなど、抗がん薬の副作用が強く出てしまうことが予想される場合は、手術のみで様子をみることになります。

悪性線維性組織球腫に気づいたらどうする

 この病気が疑われる時には、専門の施設(がんセンターや大学病院)での治療が必要です。

関連項目

 脂肪肉腫