鼻涙管閉塞、涙嚢炎とはどんな病気か

 鼻涙管閉塞では、泣いてもいないし眼の痛みもないのに、常に涙が出て止まりません(流涙(りゅうるい))。涙嚢炎になれば涙に加えて、常に目やに(眼脂(がんし))も出ます(慢性涙嚢炎)。時には、まぶたから頬、鼻部にかけ、痛みを伴って発赤、腫脹(しゅちょう)し、発熱などを伴うこともあります(急性涙嚢炎)。

原因は何か・症状の現れ方


(1)涙液の流れ図11

 涙液は常に少量(毎分1〜2μl、毎時0・1ml程度)分泌され、眼を潤(うるお)し、またさまざまな病原から眼を保護しています。涙液は目頭(内眼角)付近にあるまぶたの縁の小さな孔(あな)(上・下涙点(るいてん))から吸い込まれ、細い管(上・下涙小管。2つが合流して総涙小管(そうるいしょうかん)になる)を通過し、涙嚢(るいのう)という眼球の内側の袋に達し、鼻涙管(びるいかん)を通って鼻腔へと流れていきます。
(2)鼻涙管閉塞
 この経路が閉塞すれば常に流涙が起こり、なかでも鼻涙管閉塞が最も多くみられます。鼻涙管閉塞には先天性と後天性があり、先天性は鼻涙管の形成異常で、出生直後から常に流涙と眼脂が起こります。後天性は、鼻の病気(鼻炎、蓄膿症(ちくのうしょう)、ポリープなど)が原因で鼻涙管閉塞を起こす場合と、眼の病気(結膜炎(けつまくえん)などの炎症の波及)が原因で鼻涙管閉塞を起こす場合があります。
 高齢者に多く、流涙だけなら閉塞があるだけですが、うみの混じった眼脂を伴うことが多くみられます(慢性涙嚢炎)。
(3)慢性涙嚢炎
 鼻涙管閉塞があると涙嚢に涙液が停滞しますが、これに細菌感染が起こると常にうみ状の眼脂が出るようになります。涙嚢部の皮膚の発赤、腫脹、疼痛などはありません。この状態を慢性涙嚢炎と呼びます。
 時に、慢性涙嚢炎があっても、眼脂が出るだけで、あまり流涙の起こらない場合もあります。これは涙液の分泌が低下しているためと考えられます。
(4)急性涙嚢炎
 細菌感染により急激な涙嚢部の発赤、腫脹、疼痛、大量の眼脂、涙嚢への大量のうみの貯留などを起こす状態を急性涙嚢炎と呼びます。発熱などの全身症状を起こすこともあります。
 急性涙嚢炎は炎症が涙嚢にとどまらず、周囲の組織に波及した状態で重症です。時に、脳髄膜炎(のうずいまくえん)を起こすことさえあります。急性涙嚢炎は、先天性鼻涙管閉塞の乳児にも起こります(新生児涙嚢炎)。

検査と診断

 涙点から細い針を用いて生理食塩水などを注入し、鼻やのどの奥に流れてくるかどうかを調べます(涙道洗浄(るいどうせんじょう)、涙洗(るいせん))。閉塞があると液が逆流してきます。涙嚢にうみがたまっていると、うみが逆流して洗い流されます。

治療の方法

 先天性鼻涙管閉塞の場合は、細い針金(ブジー)を涙点から鼻涙管に刺し込み、閉塞部を突き破ります(鼻涙管開放術)。また涙嚢部を毎日マッサージすることで、しばしば、閉塞が自然に開放されます。
 後天性鼻涙管閉塞の場合は、涙嚢にうみの貯留が認められなければ、閉塞部をブジーで開放します。しかしこれだけではほとんどの場合は再び閉塞するため、細くて柔軟なシリコン性のチューブを上・下涙点から鼻涙管に挿入し、鼻涙管内腔を確保して1カ月ほどそのまま留置しておく方法があります。この方法は手軽で効果的です。
 しかし、シリコンチューブを抜いたあとに再閉塞した場合や、もともと慢性涙嚢炎があって涙嚢にうみの貯留が認められる場合は、涙嚢と鼻腔をへだてている骨に穴をあけ、涙嚢と鼻粘膜を直接つなぐ手術(涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)、DCRと略される)を行います。DCRには皮膚を切開して行う方法と、皮膚を切開せず鼻腔内から行う方法(鼻内法)があります。
 慢性涙嚢炎があっても、眼脂のみで流涙を自覚しない場合は、手術で涙嚢を取る(涙嚢摘出術)ことで眼脂は治ります。涙嚢摘出術は骨を削らなくてよいので、手術は楽です。
 急性涙嚢炎は、原因となった菌を特定し、抗生剤の大量投与で炎症を抑えたのち、鼻涙管閉塞があれば前述の治療を行います。新生児涙嚢炎の場合でも、同様に抗生剤の投与で炎症を抑えたのち、鼻涙管開放術を行います。

鼻涙管閉塞、涙嚢炎に気づいたらどうする

 常時の流涙や眼脂があれば、早めに専門医の診察を受けましょう。