どんな症状か

 嗅覚障害の内容と原因はいろいろあります。嗅覚機能の低下(嗅覚脱失(だっしつ)と嗅覚減退)が訴えの大半を占めますが、軽微な悪臭にも耐えられない嗅覚過敏(広義の化学物質過敏症)、本来よいはずのにおいを悪臭と感じる嗅覚錯誤(さくご)(異臭症(いしゅうしょう))などもあります。

原因は何か

 嗅覚機能の低下は、(1)呼吸性嗅覚障害、(2)末梢神経性嗅覚障害、(3)中枢神経性嗅覚障害に分けられます。
 (1)は、鼻中隔(びちゅうかく)の弯曲や術後の粘膜癒着などの鼻腔形態異常(びくうけいたいいじょう)や、慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)やアレルギー性鼻炎に伴う粘膜のはれやポリープにより、におい分子が両側鼻腔で嗅上皮(きゅうじょうひ)まで到達できないことによります。
 (2)には、嗅上皮の障害と嗅糸断裂(きゅうしだんれつ)による場合があり、前者は嗅上皮の萎縮や炎症が原因で感冒(かんぼう)などウイルス性のことが多く、後者は頭を打ったことが最も多い原因です。頭を打った時の嗅覚障害は難治性です。抗腫瘍薬(こうしゅようやく)のテガフールの長期投与でも嗅覚は損なわれます。慢性副鼻腔炎や通年性アレルギー性鼻炎は(1)と(2)の混合型です。
 (3)は頭部の外傷や脳腫瘍(のうしゅよう)、加齢が要因になります。
 なお嗅覚障害が、アルツハイマー病パーキンソン病の初期症状である場合もあります。

治療の方法

 重症度と原因疾患により違ってきます。慢性副鼻腔炎に伴う嗅覚障害では、内視鏡下鼻内手術(ないしきょうかびないしゅじゅつ)が有効です。私たちの治療例では、嗅覚を失ってから2年以内なら手術での嗅覚回復の可能性が高く、また14員環系(いんかんけい)マクロライド(抗生剤の一種)の長期投与も45%の有効率であることが報告されています。
 ステロイド薬の点鼻および経口投与は、ただひとつ確立された嗅覚障害に対する薬物治療です。経口ステロイド薬は、アレルギー性鼻炎に伴う呼吸性および末梢神経性障害に最も有効ですが、副作用に注意しなければなりません。診断的治療として短期間の投与は行いますが、致死的な障害ではないため、料理人やソムリエを除けば、長期投与はしません。
 ステロイド薬の点鼻は、呼吸性・末梢神経性障害を問わず広く行われていますが、懸垂頭位(けんすいとうい)(頭を後ろに倒した状態)の点鼻では大半の薬液は嗅神経まで到達しないで、咽頭(いんとう)へ落下してしまいます。四つんばいになり、自分のへそを見るような頭位をとり、鼻の裏面を薬液が伝わるように点鼻すると効率よく嗅裂に到達できます。ステロイド薬に先立って血管収縮薬を点鼻しておくと、より効率よく点鼻できます。
 鼻中隔上方で粘膜下にステロイドデポ製剤(効果が長続きする製剤)を注射する方法も行われています。血清亜鉛(あえん)が低下している場合には、硫酸亜鉛の内服が有効な場合もあります。中枢性嗅覚障害には原因疾患の治療しかありません。