上顎洞がんとはどんな病気か

 上顎洞に発生する悪性腫瘍が上顎洞がんですが、このうち上顎洞の上皮(表面の細胞)から発生するものを上顎洞癌(がん)といい、上顎洞がんのほとんどを占めます。
 耳鼻咽喉科領域のがん(以下、本稿では“がん”で表記します)では、喉頭がん口腔がん舌がんなど)とともに多いがんですが、胃がんや子宮がんと比べるとずっと少なく、日本の年間推定患者は約1000名で、男性にやや多いといわれています。

原因は何か

 多くの他のがんと同様に明らかな原因は不明ですが、慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)(蓄膿(ちくのう))との関係がいわれています。もちろん慢性副鼻腔炎がすべてがんに移行するものではありません。これは上顎洞がんの患者さんに慢性副鼻腔炎が合併していることが多いといったほうが正しいでしょう。近年の上顎洞がんの減少が、慢性副鼻腔炎の減少に関係していることが、臨床疫学的にいわれています。

症状の現れ方

 頬部(きょうぶ)(ほほ)のはれが最も多く、そのほか頬のしびれ、膿血性鼻漏(のうけつせいびろう)、歯痛、開口障害などです。がんが眼のほうに進むと、眼の症状(眼の突出、視力障害など)が現れます。しかし、がんが上顎洞内だけにある場合は症状がほとんどないので、その時期に発見することは困難です。頸部(けいぶ)リンパ節への転移があれば、頸部腫瘤(しゅりゅう)が現れます。

検査と診断

 腫瘍が鼻腔に進展して(広がって)いる時は、そこから生検(組織をとって調べる)が可能で、顕微鏡による組織学的所見を得ることができます。鼻腔に進展せず、かつがんが疑わしい場合は、歯肉から切開して(試験開洞(かいどう))生検を行います。
 がんの進展をみるにはCT検査が有用です。副鼻腔はすぐ上方に脳があるので、がんの進展をみることはとくに重要です。頸部のリンパ節に転移することがあるので、頸部の検査(CT、超音波エコーなど)も必須です。

治療の方法

 以前は上顎洞がんに対する標準的な治療は、手術が主体で上顎を全部取っていました。近年、有効な化学療法(抗がん薬)の開発と放射線治療の改善が進み、それらと手術を上手に組み合わせた集学治療(三者併用療法)が一般的になりました。手術による機能欠損を少なくしようとする治療法です。
 放射線治療では化学療法(抗がん薬)を同時に用いる化学放射線療法が行われています。早期がんでは鼻の穴から内視鏡を用いて行う手術(ESS)も可能ですが、進行がんでは歯ぐきから切開を行うことが一般的です。
 三者併用療法導入後の5年生存率は50%を超えようとしています。それでも頭蓋底(ずがいてい)(脳)へ進展した例は予後不良であり、上顎洞がんについても早期発見が重要といえます。

上顎洞がんに気づいたらどうする

 前述の症状があれば、設備の整った総合病院の耳鼻咽喉科への受診をすすめます。悪性腫瘍ですから、早期発見・早期治療が必要なことはいうまでもありません。