顎骨骨折とはどんな外傷か

 眼より下の顔の土台になるのがあごの骨(顎骨)で、ものを噛む時などに動かす下顎(かがく)(下あご)とそれに向かい合う上顎(じょうがく)(上あご)からなっています。上下ともに元々は左右の骨として発生してきますが、下顎では正中で硬く癒合して一体化しています。あごには歯が生えてきて噛み合うようになり、上下の骨の位置関係がきっちりと記録されています。


 あごの骨が砕けたり折れたりするけがが顎骨骨折です(図23)。多くの場合、転んだり、殴られたり、スポーツ事故、自転車・自動車事故などで、あごや顔面を何かに強く打ちつけた時に発生します。高齢者では、何もしなくても顎骨が自然に折れてしまうこともまれにあります。

症状の現れ方

 歯槽(しそう)骨折の場合は、歯を叩くと痛かったり、噛み合わせることができなかったりするので、容易に見つけられます。強い力が加わったあと、口や鼻からの出血があったり、急なはれ、噛み合わせのずれなどが平均的な症状です。症状は必ずしも力が加わった部分にとどまらず、下顎ではあごを動かした時の痛み、上顎ではものが二重に見えるなどの症状が主になることもあります。
 受傷後すぐにははっきりした症状に気づかず、数日してから噛み合わせがずれていることで気づくこともあります。この場合は、口のなかから直接見えない下顎角部(エラの部分)や顎関節部(耳の前)の骨折が考えられます。

検査と診断

 受傷の直後では、まず出血や呼吸の様子を観察したうえで、あごのけがそのものの診察・検査に進みます。視診触診などで骨折の有無と場所の見当はつきますが、より詳細な判断にはX線検査が必要です。最近ではCTにより、かなり詳細に診断できるようになり、臨床的な所見と併せて程度を判断します。
 上顎では、鼻の下の線で水平に折れる1型、鼻の付け根から上顎大臼歯と頬骨(きょうこつ)の間にかけてななめに折れる2型、眼の位置で水平に折れてしまう3型に分ける、ルフォー分類がよく使われます。
 下顎では、過度な力が集中しやすいあごの正中部、下顎角部、顎関節部がよく骨折します。

治療の方法

 折れる場所によって治療の方法は大幅に変わります。おおまかには、急性の重度のものでは、呼吸障害や出血による生命の危機を回避し、さらにその後も、咬合咀嚼(こうごうそしゃく)障害など、あごや顔面の機能障害や傷を最小限に抑えるよう、できるだけ早い時期に根本的な整復固定手術を行います。
 それ以外のものでも、骨折部位のずれの程度が大きければ手術療法が、小さければ噛み合わせの確保(上下のあごを縛り合わせる「顎間固定」)が基本です。以前は顎間固定が第一選択でしたが、最近ではできるだけ正確に骨をつなぎ合わせ、できるだけ早く正常の生活にもどれるような治療法がとられるようになりました。
 より小範囲である歯槽骨折(歯が並んでいる歯ぐきの下地の部分)であれば、その場所の骨(と歯)を元の位置にもどし、歯と金属線を使って固定します。あとから歯の神経の処置が必要になることもあります。